Mirage Red Rose【tn】 ページ8
トントンさんと出会ったのは植物園だった｡
赤や白､ピンクなど色とりどりの薔薇園の中にある東屋で出逢った｡
最初は遠目から眺めるだけだったんだけど…その内に話してみたいと思うようになり､思い切って話し掛けたのが切っ掛けだ｡
『あ､あのっ!!何を見てらっしゃるんですか…?』
いきなり見知らぬ女性が話し掛けてきたので少し驚いていたが小さく笑みを浮かべてこう答えてくれた｡
tn「あ…いや､別に何を眺めてるでもなく…その､少しボーッとしてただけですよ｡」
その照れくさそうに笑う顔が私には輝いて見えた…きっとこの時に一目惚れしたのだと思う｡
それから､私は週一でその薔薇園へ足を向けるようになった｡
トントンさんのお話はとっても面白いもので､お友達とのお話をしてるときは本当に楽しそうにしていた｡
『トントンさんって､本当にお友達が大好きなんですね｡』
私がそう言うとトントンさんは少し暗い表情を浮かべた｡
tn「せやな……俺は､彼奴らのことがなによりも大切やった…大切やったんや……｡」
何故､そんなに泣きそうな顔をするのか分からなかった｡
私は思わずトントンさんの腕を引っ張り自分の胸の中に抱き締めた｡
『そんな顔をしないで下さい…私まで悲しくなってしまいます｡』
tn「……っ､ホンマAさんは優しいんやな
……有り難う｡」
そう言ってもらえるだけで私の心は満たされた｡
少しでもトントンさんの力になれてるのが嬉しかったのだ｡
そんな日が続いてたある日…トントンさんがこんな事を言い始めた｡
tn「Aさん､俺な…もう､此処にこれへんかもしれん｡」
『え…そんな……お仕事の都合ですか?』
tn「んー…まぁ､そんな所かな?」
そう言って苦笑いを浮かべる彼の顔は何だか疲れてるように見えた｡
『……また､会えますか?』
私がそう聞いても苦笑いを浮かべるばかり…｡
この時､私は確信した…もう､会えないのだと｡
『……それなら､私､貴方に言いたいことが……!!』
私が言い掛けると男らしい指で唇を止められてしまった｡
tn「…それを聞いてしまったら､俺は“あっち“に戻れんなってまうから､いわんで?」
トントンさんも何処か泣きそうな顔をしていた｡
こんなに思い合ってるのに“愛してる“の言葉が言えないのがこんなにもむず痒いのだと､そう思った｡
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作者名：はふー&チョコキノコ&雪鈴 x他1人 | 作者ホームページ：それぞれの作者さんのホムペ見てね
作成日時：2020年8月11日 13時
