-3 ページ6
・
side赤
俺はまだ認めたくない気持ちは少しあったけど、それからは周りには今まで通りの俺でいようと気を張っていた。
Commandのような言葉が聞こえてきたらさりげなく耳から遠ざけたり、自分から話題を振って話に集中できるようにしたり。
どうしてもって時は樹に目配せして隣にいてもらったりした。
おかげで、樹以外には俺がSubだということは気が付かれずに過ごすこと約3ヶ月。
最初の頃はどうやら体がSubという性に慣れていなかったようで、でも今はもう自分以外に向けられるCommandには反応しなくなった。
だからSubだと知られなければ何か言われることもないから、とにかくNormalだった自分と変わらずいようとした。
でも、この男だけは違った。
「もう、またついてきたの？ 俺もう大丈夫だよ」
「違ぇって。マジでトイレ行きたかったの」
「ほんと〜？」
「ほんと！」
「HAHA！」
仕事で一緒になった時は、何かと俺のことを心配して頼まずともそばにいてくれるようになった樹。
･･･もう大丈夫なのは本当。
だけど、この距離感で樹がいてくれているってだけで安心するから前の感じには戻りたくないとも思ってしまう。
この気持ちが何なのかはわからないけど。
この日の仕事が終わって楽屋を片付けて、後は帰るだけになった時。
マネージャーの車に乗る皆についていこうとしたら誰かに腕を掴まれた。
振り返って見ると樹で、後で追うから先行っててなんて言って、楽屋に2人だけが残った。
掴まれたままの腕を引かれてソファの前に立つと、樹が俺を見上げた。
「樹？」
「ジェシー。･･･
「っあ･･･」
「
「っ･･･どうしたの、樹？」
いきなりCommandを出されて床にペタンと座らされた俺の頭を、しゃがんで目線を合わせた樹は優しく撫でてくる。
今、俺は全くCareが必要な状態じゃない。
Care以外でCommandを出されるのは初めてだった。
その意図を知りたくて顔を見つめていると、樹の手が俺の頭から頬に移動したかと思えば次の瞬間、視界が樹でいっぱいになって唇に温かくて柔らかいものが触れた。
「･･･え？」
･･･俺、今キスされた？
顔が離れて数秒後、時間差でやっと状況を飲み込めた。
でも、なんで？
すると、真剣な顔をした樹が俺をじっと見つめて口を開いた。
「･･･お前のこと、好きになった。俺がお前を守りたい。･･･って言ったら、困る？」
「っ･･･」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1093人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩佑実 | 作成日時：2023年6月4日 19時
