すとすと１０[短編集] (ページ17)

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･･･って俺、何考えてんだ。バカか。

そんな邪な気持ちを無かったことにするかのように、慎太郎を隣に座らせて深呼吸をして、真面目に面談に向き合う。

「えー、では早速なんですけど、こちらが先週までに慎太郎くんに出してもらった進路希望の用紙です」

「はい。･･･慎太郎、これ、レベル高くね？」

「え、そぉ？行けるっしょ！」

「おま･･･すみません」

「いえ」

本当に自分の今の学力わかってるのか？と思わず言いたくなるような高校の名前が書かれていて驚く。

適当に書いたんじゃないかとも思いたくなってしまうけど。

松村先生が慎太郎に将来何になりたいのかと聞くと、慎太郎は俺はねーこれ！と言いながら先生にビシッと人差し指を向けた。

「おい、人に指差すな」

「あ、ごめんなさい。俺ね、学校の先生になりたい」

「え？初めて聞いたんだけど」

「僕も初めて聞きました」

「だってまだ誰にも言ってないもん」

ママにも言ってないって･･･これ益々俺が来てよかったのかよ･･･と内心不安しかない。

でも、それから時間まで話し合って何とか三者面談は終わった。

「ありがとうございました。これからも慎太郎のことよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「先生、じゃあね！」

「さようなら、だろ」

「えへへ、さようなら！」

「ふふ、さようなら。気をつけて」

帰り際までこのヤンチャ坊主(まぁ俺もこんなだったから人のこと言えないんだけど)とそんなやり取りをしていれば、松村先生は最後にクスッと笑った。

さっきまで真面目な話をしていたから見られなかったけどそんな可愛い顔もするんだ･･･。

「･･･り。じゅーり！」

「あ、え、何？」

「樹、惚れたでしょ」

「は？」

夕日を背に家まで帰る途中、隣を歩く慎太郎に名前を呼ばれたと思えば、とんでもないことを言ってくる。

「松村先生、かっこいいもんねぇ？」

「バカ。んなんじゃねぇよ」

「へへ、樹わっかりやすいね〜」

「だから違えって！」

って、中学生相手になにムキになってんだ･･･。

･･･でも、正直図星だった。

一目惚れなんて今までしたことなかったしするタイプでもないと思っていたけど、彼に会った瞬間から好きだと感じてしまった。

でも、相手は慎太郎の担任だしな･･･

「俺はいいと思うよ」

「え？」

「樹だって、まだ学生だけどもう成人してるんだし。俺は応援するよ」