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更衣室兼休憩スペースに移動して、持ってきた夕飯を広げる。
健康志向な北斗のために野菜も少し多め。
「美味そっ」
「ふふ。はい、箸」
「ありがと。いただきます」
「どーぞ」
メインは親子丼。
鶏肉は大きめに切ったから食べ応えがよくて、味も我ながら上出来。
北斗も頬をリスみたいにして美味しそうに食べてくれて、俺のお腹も心も満足だ。
「あー、お腹いっぱい。ご馳走様でした」
「いえいえ〜」
「ふふ。ねぇ、慎太郎もう帰る?」
「俺はどっちでも」
「じゃあもうちょっとだけ待っててくれない? 一緒に帰りたい」
「ん、いいよ。待ってる」
そうして再び厨房に戻っていく北斗の背中を見送る。
出会った頃はまさかパン屋をやっているなんて想像もしていなかったけど、この道を選んでよかったなと思う。
どこかで働くんじゃなくて2人の店にしたことで北斗とずっと一緒に居られるし、さっきみたいな一生懸命な顔も、お客さんと話している時の楽しそうな顔も、ちょっとお疲れの顔も、全部見られるから。
次はどんなパンが生まれるんだろうと楽しみにしながら、俺の頭には今は何も浮かんでこないからゲームなんかをして北斗を待つこと約2時間。
部屋のドアが開く音がしてスマホから顔を上げると、スケッチブック片手にごめんお待たせって微笑む北斗がいた。
「お疲れ、北斗。できたの?」
「うん。何となくイメージしてたのが固まったよ。明日以降試作品作ってみる」
「そっか、わかった。楽しみにしてる」
「ふふ、うん」
「じゃあ帰ろっか」
今度は2人並んで店を出た。
北斗の左手を取って繋ぐと、周りを見渡して照れ臭そうにしながらも握り返してくれる。
こうすると、仕事の顔から彼女の顔にあっという間に切り替わるから可愛いんだ。
「そういえば、今日もまたお客さんにかっこいいって言われてたよね、北斗。あとなんか、尊い?とか何とかって言ってる人もいたよ」
「え? あれは慎太郎にじゃないの?」
「いやー北斗でしょ。俺なんかどこが?って感じだもん」
「・・・そんなことない」
「ん?」
「慎太郎は、かっこいいよ」
「っ・・・ありがと」
「ふふ、やっぱ照れるのね」
「うるさいよ、もう」
ほんと狡い。
ここが外じゃなかったらすぐにでも抱き締めたのに。
とにかく、帰ったらもう玄関でハグとキスをしようと決めて家路を急いだ。
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作者名:彩佑実 | 作成日時:2023年6月4日 19時