Ep.5「Keep on fallin' in love with you」黒×桃 ページ9
ノンリアル
・
side桃
あの日、俺はお世辞にも広いとは言えないこじんまりとしたビルの2階にいた。
謙遜でも何でもなく全然知られていない学生絵描きだったけど、たまたま知り合いが5日間だけ場所を貸してくれると言うから、お言葉に甘えて小さな個展を開くことにした。
当初から少なく見積もっていたけどそれよりも少ない人数しかお客さんが来ていなくて、会場で暇を持て余していた。
そんな、3日目の昼下がりのこと。
その時中にいたたった1人のお客さんと入れ替わるようにしてやって来たのは、学生服を着た若い男の人だった。
彼は遠慮がちに「高校生なんですけど大丈夫ですか」と言いながら入ってくるから、俺は笑顔でもちろんですと返すと、安堵したような顔をしてゆっくりと俺の絵を見始めた。
他に人もおらず、お客さんに呼ばれない限りは自分から話しかけには行かないためすることもなかった俺は、そんな彼の後ろ姿や横顔を終始盗み見ていた。
俺より少し身長が高くて、それなのにスラッと伸びる長い足と、それに反して小さい顔。
何にも染まっていない、真っ黒で真っ直ぐな髪。
そして、適度に凹凸のある美しい輪郭。
それらはすぐに俺を虜にさせた。
一目惚れ、だったのかもしれない。
十数分、大した数があるわけでもない絵をじっくりと見終えて再び受付に戻ってきた彼に、名前に加えて一応次があるときのための通知用に連絡先を書いてもらう。
"松村北斗"。
控えめそうな雰囲気とは裏腹に丁寧で、でも力強いその文字に、俺はまた胸が高まったのだった。
お礼を言って帰ろうとするその背中に、思い切って声を掛ける。
思えば、見知らぬ誰かに自分から話しかけたのは、この時が最初で最後だった。
「あの！」
「はい･･･？」
「また、来てくれますか？」
「･･･はい。どれも凄く綺麗でした。また、来ます」
僅かに微笑んで俺に会釈をすると彼は今度こそ帰って行った。
「また」はどうせ建前だろうと思いながら迎えた最終日のしかも終了間際、彼は本当にやって来た。
今度は制服ではなく、オシャレな服を見に纏って。
「間に合ってよかった」
「ふふ、来てくれないんだと思ってました」
「最後の方が、ゆっくり話せると思って･･･。迷惑、でしたか？」
「全然。来てくれて嬉しいです」
片付けは焦らなくてもいいと言われていたから、廊下に出ていた看板だけを中に入れて個展を仕舞い、俺は彼を奥の控え室に招き入れた。
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彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (
レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか？ (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彩佑実 | 作成日時：2021年11月27日 23時
