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side黒
樹の言葉には何も返すことができず、ましてこのまま目を合わせ続けることもできず、俯いて顔を逸らす。
そして"酔っている"からだと自分の中で言い訳をつくると、一つ深呼吸をしてもう一度樹を見た。
「北斗?」と、樹が困り顔で俺の名前を呼ぶ。
「あの、さ。今からすることは全部俺が勝手にすることで、樹は何も悪くないから。だから、すぐ突き飛ばして」
「は? なに、何の話?」
「とにかく、突き飛ばしてくれればいいから」
「んなこと言われても・・・!?」
困惑する樹を無視して左手を樹の首元に持っていきこっちを向かせれば、俺は間髪入れずにその唇を塞いだ。
気持ち悪いと突き飛ばしてほしくて、ビールの苦味が残るそれに一方的に口付ける。
でも、待てども一向に突き飛ばされる気配がない。
遂には俺から唇を離せば自然と涙が出てきた。
睨むように見たら、何故か涙目になった樹がいた。
「なんで・・・。男にキスされてんだぞ? キモイとか嫌だとか言えよ・・・!」
「北斗・・・俺・・・」
「頼むから・・・俺を突き放してよ・・・」
止まらなくなった涙は下を向けばボロボロと零れ落ち、ズボンに大きな染みを作っていく。
数秒、いや、数分にも思えた沈黙を破ったのは、樹だった。
「北斗、顔上げて」
「・・・」
「ほくと」
今まで聞いたことがない樹の、柔らかくて優しい声が聞こえたから、雑に涙を拭ってゆっくり顔を上げると思わず目を見張る。
樹は、静かに泣いていた。
そのままの顔で僅かに笑みを浮かべた樹が口を開く。
「俺は、北斗を突き飛ばせない。だって、ずっと好きだった奴にキスされて、んなことできねえよ」
「ずっと・・・好きだった・・・?」
「そうだよ、勿論今もだけど。3年前のあの日、教室の端で1人でいる北斗見て、なんかすげえ気になった。実際話しちゃったらそこからはもう、北斗しか見れなくなって。だからめっちゃ頑張って北斗と同じ大学にも入った」
「嘘だ。だって、樹、彼女いるじゃん・・・」
「いないよ。・・・大学入ってもずっと、この気持ちをどうしたらいいかわかんなくて、やっぱ北斗のこと諦めようって、嘘ついた。ごめん」
「っ・・・んなこと言われても、すぐ信じれない・・・」
俺がずっと好きな人が、ずっと俺を好きだなんて、そんなのどう考えても冗談としか思えない。
でも、そう言う樹の表情は嘘をついている顔ではないのは明らかで、夢なのではとさえ思い始めた。
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彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか? (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩佑実 | 作成日時:2021年11月27日 23時