-2 ページ27
・
side黒
「てか何をそんなにいっぱい持ってきたの」
「あー、酒と飯」
「いくらよ」
「え？ いや、いいよ」
「いやいや、これは流石に半分払わせろ」
「いいってこんくらい」
何度かのやりとりの末に折れたのは俺。
誘ったの俺だからとしつこく言ってくるもんだから、仕方なく鞄から取り出した財布をしまった。
バイト終わりだし走ってきたしで腹減ったと樹が言い、俺も早くに昼を食べたこともあって丁度お腹が空いていたから、早めの晩飯にする。
大晦日とはいえ、所詮大学生の男2人。
袋から出てきたのは弁当とカップ麺がいくつかで、豪華でも何でもなかった。
たぶん俺が何を食べるかわからなかったんだろう、1食で食べるには明らかに多い量が入っていて、やっぱり奢られたのが申し訳なくなった。
同時に袋から缶ビールも取り出して樹の前に置いてやると、今はいいと言うから理由を問えば、
「だって、年越しの瞬間に一緒に飲みたいじゃん？」
「･･･」
「ふは、冗談。あとで適当に飲むから冷やしといて」
「お、おう」
平気でそんな冗談を言うコイツは小悪魔なのか、ドキッとした時間を返せと本気で思った。
結局2人とも弁当を選んでローテーブルに向かい合い、とりあえずお茶で乾杯。
今日は大晦日だからバイトが忙しかったとか嫌な客がいたとか、樹の愚痴を聞きながら話に花を咲かせつつお腹を満たし、その時まで普通に友だちとして楽しい時間を過ごしていた。
23:55。新年まであと5分。
冗談と言っていたのに樹は本当に今の今まで酒は開けず、このタイミングで勝手に冷蔵庫から2缶持ってくる。
するとさっきまでとは違って、俺の隣に腰を下ろした。
近づいた距離に若干心拍数が上がりつつ、渡された缶ビールをプシュと開ければ残り数秒。
樹が10、9、8、とカウントダウンを始める。
「･･･3、2、1！ あけましておめでとー！」
「声でけえな(笑) あけおめ」
「はい、乾杯〜」
コツンと缶をぶつけて、一口含んで味わう。
何度目かのその味はやっぱり苦くて不味くて、全然飲み切れそうにない。
反対に樹はゴクゴクと飲んでいて、その度に上下する喉の動きが艶やかで思わず見惚れてしまっていた。
俺の視線に気付いた樹と目が合う。
「どうした、北斗。俺の顔に何かついてる？ それとももう酔った？(笑)」
酔った、のかもしれない。
でもそれは一口飲んだだけの酒にではなく、好きな相手と自分の家で2人きりという雰囲気に、だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 496人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (
レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか？ (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩佑実 | 作成日時：2021年11月27日 23時
