すとすと[短編集]

Ep.12「年越しマジック」青×黒 ページ26

ノンリアル、大学生
・
side黒



今年も残すところあと3日。

家でゴロゴロしていたら突然高校からの友人である樹から電話がかかってきて、31日の夜は空いているかと聞かれた。



「空いてるけど」

『よっしゃ、お前ん家でカウントダウンパーティしようぜ』

「え、やだ」

『何でだよ(笑)』

「パーティって、俺が友だちいないの知ってんだろ」

『だーかーらー、2人でやんの』

「は？ 益々意味わかんねえ」

『とにかくやるから』



と、勝手に決められたカウントダウン会。

両親が旅行に行くと言うから特に帰省もせずに1人で過ごす予定だった年越しを、2人でなんて言われて内心ドキドキした。

本人には言っていないけど、言えるはずもないけど、樹は俺の想い人で、初恋の相手でもある。

彼女がいるのに俺なんかと年越しするのかと思いつつ、好きな人に誘われて断るという選択肢は生憎持っていない。

そんな俺の気も知らない樹に一方的に電話が切られると、当日のことを想像して起こるはずもないことまで色々考えてしまい、この日は布団に入ってもなかなか寝付けなかった。



高校2年のとき。クラス替え後も、また1人でイヤホンして本でも読んでいようと思っていた。

そうしたら進級初日、俺の右耳のイヤホンを引っこ抜いて話しかけてきた鬱陶しい奴がいた。

それが樹。

髪色は派手な上によく変わるしピアス開いてるしで見た目はチャラいのに、それに反して意外と真面目で統率力があって気も使えて、好きになるのにそんなに時間はかからなかった。

俺が大学受験すると話せば北斗がするなら俺もとか言って、何故か俺と同じ大学を受験して一緒に受かり、今に至るというわけだ。

そんな理由で進学を決めていいのかとも思ったけど、友だちとしてでも隣に居られる時間が4年延びたことが嬉しかったから、俺は何も言わなかった。



大晦日。

樹は夕方までバイトだと言うから、樹が来るまで普段通りの休日を過ごそうとした。

でも結局、数週間前に親が来て以来久々の来客で、しかもそれが好きな人とあらば部屋の掃除や整理をせずにはいられずバタバタしていたら、樹がモニターに映る。

部屋に入った樹はあちーなんて言いながら何の遠慮もなくソファに座り込んだ。

モコモコの上着を着てバイト先から走ってきたらしく、それなら冬とは言えど暑いだろうなと思う。



「んな焦んなくても、俺は逃げないっての」



俺の言葉にふはっと笑う樹の顔は、光る汗で何だか神々しく見えた。

-2→←-5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す