-2 ページ16
・
side黄
撮影で訪れたのはかなり前だし本当はもっと早く来たかったけど、なかなかお互いのタイミングが合わず。
たまたまだけどやっとできた今日という時間に、休みで家でぐうたらしているであろう樹を引っ張り出した。
明確な理由はない。
この海を樹と一緒に見たいなって、ただそう思った。
そのまま樹に伝えれば何だそれなんて言われたけど。
俺から告白して樹が応えてくれた日から1年と少し。
にも関わらず職業柄、デートというデートは片手で数えるほどしかしたことがなかった。
言葉も交わさぬまま、互いの手の温もりを感じながら広い場所にたった2人という雰囲気に浸っていた。
暫くするとふいに視線を感じて隣を見れば、何やら不安そうな顔をした樹と目が合う。
「どうしたの」
「いや･･･俺らってアイドルだし、その、男同士じゃん。だから、いつまでこうやって一緒にいれんのかなって思って」
「･･･」
「ずっと先まで続いてる海みたいに、何年先もずっとこー･･･じゃなくて、優吾と、一緒にいたいのになって、ちょっと思っちゃった」
「樹･･･」
「ごめん。重いな、俺」
「もう、バカじゃないの」
意味のない心配をして勝手に不安になってる樹を、目一杯腕の中に閉じ込める。
強すぎたのか苦しいなんて声が聞こえたから少しだけ力を緩めてあげれば、控えめに俺の腰に腕が回された。
「確かに、俺たちはアイドルだし、男同士だから結婚もできないけどさ。何があっても、俺はこの先もずっと樹といたい」
「･･･」
「永遠なんてないってよく言うけど、樹とだったら信じられるし、信じたい。樹は？」
「俺も、優吾となら信じたい」
「うん。それでいいじゃん。ね？」
「･･･うん」
「ていうか、いつか樹が離れたいって言っても離してやんないからな」
「俺だって、何と言われようと、離れる気ねえし」
「ふふ。だから、泣くな」
身体を離してそっと涙を拭ってあげる。
俺が気付いていないとでも思っていたのか、少し驚いた顔をしている樹に思わず笑うと拗ねてしまった。
温もりが無くなって急に感じた寒さから逃れようと、まだ拗ねている樹の手を取って車に戻る。
再び顔を見れば、俺の好きないつもの樹に戻っていた。
丁度よく夕日に当たって赤く染まった樹は、ライブの照明が当たるとはまた違っていて、凄く綺麗だった。
優吾、と樹が俺の名を呼ぶ。
初めて単体で、躊躇いもなく発されたそれに鼓動が急速に速度を上げる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 496人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (
レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか？ (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩佑実 | 作成日時：2021年11月27日 23時
