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side桃
そうして連絡先も交換せずに彼と別れてから3ヶ月。
約束の日、彼は胸に赤い花を付けた学ラン姿で青いカバーの卒業証書を持って俺の前に現れた。
雲一つなく、穏やかな風が吹く春らしい陽気のする日だった。
そして、向かい合った俺たちの頭上には、かつて描いた絵のように満開に咲く桜。
まるで、2人の再会、そして始まりを祝福してくれているかのように風に乗って舞っていた。
・
あれから数年。
お互い大学を卒業して社会人になっても、俺たちは一度も離れることなく今も隣で並んで歩いている。
「・・・が、大我。どうしたの、ぼーっとして」
「んーん、何でもない」
いつもと変わらない朝。
でも、この時期になると毎年あの日のこと、握られた手の温もりを思い出す。
「北斗、それ食べたら散歩行こうよ」
「いいけど、急だね」
「ほら、今日あったかいから。なんか外出たくなった」
コートを羽織って、ゆっくり歩く。
閑静な住宅街、周りには踏むたびサクサクと音を立てる葉があるのみで、他に人も動物も何もいない。
そっと彼の手をとって横顔を見つめると、こっちを見ずにキュッと握り返される。
何年経っても照れ屋なところも好きだ。
暫くすると川沿いの道に差しかかった。
大きいが故に遠くからでもよく見えるそれも、変わらずそこにある。
木の下に着いて、休もうかと彼が言うから太い幹に背をつけて並んで座り、川を眺める。
手は繋がったままで。
「何となくここに来るんだろうなって思ってたよ」
「ふふ。もう何回目だろうね」
「さあね。でも、始まったのも待ち合わせもいつもここだったから、今でも好きな場所だよ。それも全部、あの日の大我のおかげ」
「俺に一本取られちゃった日ね(笑)」
「あーそんなこと言ったっけ俺、恥ずかし(笑)」
こうして2人でのんびりと話して笑い合う時間が1番好きだ。
頭を傾けて彼の右肩に乗せたら今日は甘えただねなんて言われて恥ずかしくなり元の体勢に戻ると、握っていた手を離して俺の頭を引き寄せるから彼の肩の上に逆戻り。
その仕草と、そのまま髪を撫でる手の感触が優しくて、俺はまたあなたに恋をする。
「北斗、いつもありがとね。大好き」
「え、今日何かあったっけ。俺忘れてる?」
「いや、特になーんにも。でもいいでしょ、何もない日だって」
「そりゃあね、嬉しいよ」
「ね、北斗は?」
「ん? ・・・俺も、愛してるよ、大我」
Fin.
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彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか? (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩佑実 | 作成日時:2021年11月27日 23時