Ep.1「つなぐ」青×緑 ページ1
ノンリアル、会社の同僚
・
side青
「おまたせ」
そう言って声をかけるとすぐにスマホから顔を上げ、まるで花が咲いたように笑う君。
会社から駅とは反対方向に歩いて5分ほどのところにある、1つのベンチ。
定時を過ぎてから時間差で会社を出てここで落ち合い、こうしてどちらかの家に一緒に帰るのが俺たちの日常になっていた。
「寒くなってきたね」
「そうだな。もう11月も終わりか、早いなー」
「そろそろ手袋出さなきゃかなー」
そう言って君は手をすりすりと擦り始める。
「慎太郎、ん」
「え?」
「いいから、ん」
普段公然の前で手をつないだりなんてしない。それはいつしか暗黙の了解になっていた。
でも、今日は何となくそんな気持ちになった。
そんな俺の思いを知ってか知らずか、やっぱり君は俺の右手を取ろうとしない。
「まだ人多いですよ、先輩」
「おま、それは狡いって」
「へへっ」
こんなときに会社で話すみたいに敬語で来るのはやめてほしい。
確かに、最寄り駅に着いて家まで残り数分という道を歩いているけど、周囲には俺たちのような仕事帰りであろう人が数人歩いていた。
でもそんなことで引き下がるほど、今日の俺は諦めが良くない。
つながれなくて手持ち無沙汰になった手で、君の左の脇腹をちょんちょんとつついてみる。
「ちょ、樹、くすぐったい」
「手つないでくれないからだぞ」
「なんだよ、それ(笑) ねえ、やだ、やめて」
「じゃあほら、手貸して」
再び手を出すと、君は戸惑ったような顔をする。
そんな顔もたまらなく好きだと思う。
すると、キョロキョロと周りを見たかと思えば、目線は俺の手に移って、そのまま手がつながれる。
それも、所謂恋人つなぎというやつで。
「だから、狡いって」
「ふふ」
「ま、可愛いから許してやるよ」
「・・・うるさい」
「てか、慎太郎の手冷てぇな。手袋つけなよ」
「やっぱいい。その代わり、樹があっためてよ」
あー、今日は尽く調子を狂わされる。
長く握っていたいけどそれよりも早くこの愛しいカノジョを抱きしめたい。
そう思った俺はつながれた手を自分のポケットにしまいこんで、最後の直線を君に気付かれないようほんの少しだけ早足で歩いて家路を急いだ。
Fin.
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彩佑実(プロフ) - (かな名前)さん» コメントありがとうございます。パスワードを解読後、スクロールして頂きますと、下の方に◎と○の付いた文章がありそちらが条件となります。ご理解、ご協力頂いた後フォロリクを送って頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2022年6月10日 19時) (レス) id: ca4215401f (このIDを非表示/違反報告)
(かな名前)(プロフ) - コメント失礼します。Twitterの必読を見たのですが条件ってどこに書いてありますか? (2022年6月10日 19時) (レス) @page49 id: 937383c613 (このIDを非表示/違反報告)
彩佑実(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして。コメントまで下さりありがとうございます。私も末ズのときの緑くんが好きなので早い段階で書こうと決めていました。楽しんで頂けてとても嬉しいです。不定期となりますが、これからも何卒よろしくお願いします:) (2021年11月30日 22時) (レス) id: 22c3e91f96 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。緑くんが絡むお話が好きでお邪魔しました。実は他に推しCPがあるのですが赤くんとの時は右側の緑くんすごく好きでして。お話、とても楽しませて頂きました。これからも素敵なお話楽しみにしています✻ (2021年11月30日 21時) (レス) @page8 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩佑実 | 作成日時:2021年11月27日 23時