燈 (ページ44)

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彼女の思い-2 ページ44

詐欺師は身に危険があっても仕方ない仕事。

実際、詐欺を仕掛けた相手を舐め過ぎて返り討ちに合ったり、裏社会にも出入りすることもあるから、そこで目をつけられて消されたなんて話とか。

まあ…この世界に身を置いてから俺は“たまたま運良く生きているだけ”と言われたら身も蓋も無い話だけど、消されたソイツは詐欺師としての仕事を上手くやり切れなかっただけなんじゃないかと俺は思う。

この業界にもルールがあるし、それに外れず、上手くやっていればそんな事に巻き込まれることは殆どない。

それに、そもそも俺は御木本を追っている。

復讐を果たすまで死なないし、死ねない。

「…A先生、そんな心配そうな顔しないでよ。俺死んじゃったりしないからさ」

先生が繋いでくれた命だから、本人を前にして心配させるような事を言いたく無い気持ちに嘘はない。

だから“死んだりしない”とは伝えた。

けれどもやっぱり先生の目をしっかりと見ることはできなくて。

A先生の知りたいことを全て話せていないのに、この一言で納得してもらおうなんて無理あるよな…。

俺は飲み終えたグラスの中を溶けて液体になりつつある氷を見つめ、カラカラ…と音をたてながらプラスチックストローでそれを掻き回した。

「……分かった。信じてる、高志郎くんのこと」

それ以上口を開かない俺に対して諦めたのか、A先生は静かにそう呟いた。

それから僅かに唇を噛んで、やっぱり思った通り、納得したとは言えない複雑な表情を俺に見せたのだった。