燈 (ページ30)

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父を助けてくれた人-1 ページ30

≫氷柱 side

お父さんが救急搬送されたらしい。

バイトを終えて、お母さんから連絡をもらった私は慌てて搬送先の病院に駆け付けた。

夜間受付の事務員の方に案内されて、お父さんが休んでいるという処置室に通される。

「…っ、お父さん！」

「氷柱…わざわざ来てくれたのか」

「だって、救急搬送されたって言うから…！」

命に関わるような病気に倒れたのかと酷く心配していた。

でもいざ駆け付けてみれば、ベッド上のお父さんは一見いつもと変わらないように見える。

「氷柱、お母さんも慌てちゃって…心配させてごめんね」

「それで、どうだったの？大丈夫なの？」

「大したことないよ、ギックリ腰だって」

お父さんはいつもの笑みを交えながら、担当の先生の診断を話す。

同時にそれを聞いて私は深い安堵感に包まれた。

「Aさん、娘の氷柱です」

お父さんのことで頭が一杯だった私は、仕切りのカーテンの陰、ベッドの傍に見知らぬ女性が居たことに気が付いていなかった。

お父さんが声をかけて、漸くその姿に気が付いた私は一先ず「こんばんは、」と挨拶をする。

「こんばんは、AAと申します」

「…吉川、氷柱です」

お互いに名前を名乗ると、Aさんは「お邪魔していてすみません」と頭を下げた。

「氷柱、その方が道端にいたお父さんに声掛けて救急車を呼んでくれたのよ、お医者さんなんですって」

事情の知らない私に、お母さんが付け加えてAさんのことを紹介してくれた。