燈 (ページ18)

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君と6年振りの会話-2 ページ18

6年という時が私たちの間に壁を作っていて、当時を思い出しながらぎこちなく会話が進む。

「…A先生、元気でした？」

「うん、元気だったよ…黒崎さんは…？」

「うーん、まあまあかなぁ」

まあまあと言いつつ、声の色は軽く心配を要する感じでは無さそうで少し安心する。

入院中、救命センターの病棟に居る頃はやはり何処か上の空で…このまま何処かへ消えてしまわないか、なんて印象をもたらせていた。

今目の前にいる彼は、少なくともその時よりかはまだ少し生きている目をしている。

「…まだ、お腹の傷痕残ってるよね」

私は気掛かりだったことの一つを思い出して声を掛けた。

「…傷、もっと上手く縫合してあげられたらよかったのにね。ごめんね」

救命医目指したての私は、オペの技術もまだまだ未熟だった。

ただひたすら目の前の命を救うことに精一杯の部分もあって、もう少し丁寧に出来たんじゃないかと彼を思い出すたびに思い、以来私はずっと気になっていた。

年頃というのもあるだろうし、身体に傷があることは男も女も関係無く気にする事だろう。

私が今謝ったところで、その傷痕が魔法のように消えるワケでは無い。

しかし、それでも私は謝らずにはいられなかった。

そんなことを思っていると、彼は口を開く。

「いいのいいの、この傷はA先生が俺を生かした証でしょ」

彼はそっと服の上から左下腹部に手を添えて答える。

“生かした証”。その言葉に私の奥が苦しくなった。