君を助けた日-1 ページ2
≫A side
「15歳、男性。左下腹部を刃物で刺された模様。来院時、血圧90/70 mmHg、脈拍97回/分、呼吸数23回/分、酸素10L リザーバーでSpO2 100 %、体温36.5 °Cです」
バタバタと救急搬送口から1台のストレッチャーが入ってくる。
付いていた救急救命士が救急車病院到着時のバイタルを述べた。
「救急隊現着時の血圧160/100 mmHg、脈拍110回/分、呼吸数18回/分、SpO2 97%、体温 36.4℃、意識清明でしたが顔面蒼白、冷汗有りでした」
「分かりました、ありがとうございます」
救急隊の方から患者情報を引き継ぎ、改めて搬送されて来た患者に向き直る。
「お名前は…黒崎さんですね。医師のAです。病院着きましたよ、もう大丈夫ですからねー」
意識が朦朧としてきていて私の声が届いているのかどうか。
男性は声かけに対する返事は無く、弱々しく“う…うぅ…”と、呻き声を漏らしている。
外表上、左下腹部に1か所の刺創。
そこから腸管が一部脱出していた。
エコーのプローブを走査していくと、モリソン窩、脾臓下面及び膀胱直腸窩にエコーフリースペースを認める。
「腹腔内出血によるショック状態に陥っている可能性があります…！」
私の声に２つ離れたベッドからは指導医である片岡先生がチラッとこちらの様子に目を配った。
「A先生、ちょっとこっちの患者で手一杯だ。任せていいか？」
「…っ、はい！」
片岡先生の采配の下、直ぐ様急速輸液を開始した。
しかし、血圧は上がらず輸液反応は無し。
更なる血圧低下の危険性が出てきた。
「A先生、どうしますか」
私に付いて処置をしてくれている看護師の益田さんが指示を仰ぐ。
「…気管挿管します。それから輸血の準備もお願いします」
「分かりました、準備します」
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作者名：千草 | 作成日時：2022年11月2日 1時
