cuz, It’s you. ページ9
≫A side
しゃがみ込んだ体勢を崩し、その場に胡座をかいて座り直したカイちゃん。
私の頷きに短く“そっか、”と溢して次の言葉を探るように自身の足元に視線を落とした。
襲われてからも暫く私の事を気に掛けていてくれた優しい彼だ。
今回もきっと気にしてしまうだろうと思って、予め彼に断ろうと続け様に私の思いを口にする。
「カイちゃん、私本当に迷惑掛けたく無い。巻き込みたくない。だからーー、」
「“だから”、何？」
ーー全部、今忘れて。
そう言い掛けた言葉をカイちゃんは、驚いた様な何なら少し怒った様な、そんな顔付きで遮った。
驚いて私も言葉を飲む。
「巻き込むって言うなら、俺はもうとっくにだよ。あの夜から俺は一枚噛んでんじゃん！ねえ、放って置けないって。相手ヤバい奴って事くらい俺にも分かるよ？」
こんなに必死になって私の言う事否定してくるカイちゃんを見ていて、胸がギュウと締め付けられる。
有難い気持ちと申し訳無い気持ちと…迷惑も勿論掛けたく無い。
もう何だか感情がぐちゃぐちゃだ。
「……どうしてそんなに必死になってくれるの…？」
私の再びの問い掛けに揺らぐ彼の瞳。
でもそれは、ほんの一瞬。
次の瞬間、彼の言葉に私は瞳を瞬かせた。
「Aさんが、Aちゃんだからだよ」
“私が私だから”…？
瞬間的にその言葉を理解は出来なかったけれど、敬称が突然変わったことに気が付いた私。
それによって抱いていた可能性が確信に変わる。
まさか…いや、違う。
“やっぱり”、だ。
「カイちゃん、私の正体に気が付いちゃったんだ…」
諦めたように私はそう口にすれば、カイちゃんは無言で首を縦に1度振る。
そして“ごめん”と彼は私に対して謝ったのだ。
カイちゃんが謝る理由なんて無いのに何故だろう。
その理由は、徐に彼の口から語られていった。
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作者名：千草 | 作成日時：2024年3月2日 18時
