推しの推し2 (ページ5)

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誑しページ5

≫A side

宣言通りに1度目の通しで気になった修正点をカバーして、無事に撮り終えた動画。

スマートフォンとカメラを操作して音楽の再生と録画を止めたカイちゃんは、踊り終えた私に対してパチパチパチと拍手を送ってくれた。

というか、憧れのアイドルを撮影補助にって…撮影を終えて一旦冷静になると中々失礼だったかも。

謝ろうと思って私は口を開く。

「カイちゃん…お手伝い有難う御座います、すみません役割押し付けて」

「なんで謝んの、そう言うの頼んでくれるって何か心許してくれてるみたいじゃん」

“心許してくれてるみたい”。

カイちゃんはそんな風に思ってくれていたのかと、失礼になってい無いようで安心はする。

「それに、気のせいかちょっとだけ話し方崩れたよねAさん」

…それは、気が付かなかった。

どうやら今日来て会ってから前よりも砕けているようにカイちゃんは感じたらしい。

寸前の彼の言葉も併せてふと感じた。

私、カイちゃんに対し心を開きつつあるのかも知れない。

それもあまり自分自身が意識しないところで。

彼に助けてもらったあの夜から、思えばもう半年になる。

あの時は彼のダンスを踊って世間的にも注目されていて…。

だからこそカイちゃんは私に気が付いてくれたけれど、その興味も一過性のものだと思っていたのに。

時間が経てば途切れると思っていたやり取りが、ここまで続くとは思ってはいなかった。

私なんかに何で構ってくれているのだろうってやっぱり思ってしまう。

「俺、Aさんの踊ってるところ好きだな〜」

ね、それにこういった言葉を普通に口にするんだから。

カイちゃんってやっぱり人誑しだよなって思う。

自分のスキルを褒められて嫌な気持ちになる人なんてそういないよね？

少なくとも私はそう。

こちらとして一線を引こうにも彼の嘘の無い言葉にはどうしても気が緩む。

そして同時に接していてちょっとした罪悪感を私は背負うのだ。

時々演じて、私が人付き合いを選り好みしてるって知ったら…？

その時は、カイちゃんはいよいよ縁を切るのかな。