推しの推し2 (ページ15)

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少女が背負っていたモノページ15

≫髙橋 side

俺だって同じ状況に置かれたら、色々と想像して多分…Aちゃんと同じ選択をするかも知れない。

「カイちゃんも見ていた“うたっておどろう！”…あの番組、終わらせたの私」

「“終わらせた”…」

告知も無しにテロップだけの最終回のお知らせも、メインキャラクターの引退に合わせた番組終了が全部急に決まった事だったからということだ。

番組側も後続の子役起用は考えていなかったらしい。

だからこそAちゃんはそんな言い回しをしたのかも。

番組終わって、実際芸能界から引退したのはその年の夏前。

人気番組の突然の終了に続けて、突然の業界引退の発表は余りにも注目を浴び過ぎる。

余計な詮索やあらぬ噂を避ける為に密かに引退をしたのだと、Aちゃんは言った。

「持ったのは1年だったかな。いよいよ世間に引退してたのが知れて…でももうとうに一般人だったし想像よりも騒ぎは大きくならなかったかな」

出版社側も、最低限守れと言われた期間がそれだったんだろうっていうのは分かる。

売れてなんぼの週刊誌だ。

人気子役のネタに対してそれを守らせた事務所の力というか…最後まで如何にAちゃんとの約束を守る為に働き掛けてくれていたのかが汲み取れた。

「何かを手に入れる為に何かを犠牲にって、それは芸能界に身を置いていた時と一緒。私は平穏や自分の身の回りの人、大切な人を守る代わりに…私は夢を、やりたい事を捨てた」

“これが先ず、私の過去の話”。

そう言ってひと息吐いて、Aちゃんは俺の目を見た。

その虚ろな瞳。

先程のパフォーマンスを魅せている最中の輝いた瞳は、まるで幻だったかのよう。

仕方無かったとはいえ、自分の好きなことを手離すのって…普通にしんどく無い？

当時だから…10代半ばでそれを1人で背負って本音隠して。

悔しいだろうな、辛かっただろうなって。

俺自身も気が付けば表情固く、眉を顰めて眉間に皺を作っていた。

Aちゃんも俺の表情に気が付いて気になったらしい。

困ったようにちょっとだけ笑って、俺の事を窺ってきた。

「カイちゃん…？そんなしんどそうな顔しないで、」

“私が選んだ選択だから”って口では言うけれど、本当に彼女の為の選択だったのか。

Aちゃんの好きなことを好きに続けられる、もっと他に手立ては無かったのか。

今それを考えても仕方ないんだろうけれど、ここまで話を聞いて俺はそう思ってしまって仕方が無かった。