合点と覚悟 ページ12
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目の前の彼女が諦めたようにそれらを認めた時、勿論驚きはした。
けれど、ずっと胸の中に渦巻いていた蟠りは少しスッキリしたのは間違いなくて…。
いつまでも“もしかして”を抱えているよりはずっと気持ちが楽になった。
“辞めるに辞められなくて、この歳までダンスやってます。”
“…ダンス、仕事に出来たら良かったんですけどね。”
“昔に色々あって…恥ずかしながら大人になるまで友達は居なかったんです。”
Aちゃんの口にしていた言葉も、踊りながら見ている景色も。
事実と照らし合わせれば何と無く合点がいく。
妙に隠し事が多いミステリアスな部分は、元々芸能の世界に身を置いていたが故のガードの硬さだったのかも。
既に引退して一般人に戻った身でもあるし、余り過去の活動について大広げにしたく無い…。
単純に解釈すればそうなのかなって。
AさんはAちゃんで、今俺の目の前に居て。
憧れの人を前にして、喜びとか嬉しさが普通湧くはず。
けれど、思った以上にどこか冷静で居たのには、初めて会った夜の不審者が未だに彼女に付き纏っている事が明らかになったから。
しきりに俺に対して巻き込んでごめんと彼女は言うけれど、思い当たる不審者もあれきりだ。
何かに巻き込まれた実感は無い。
だから、俺は大丈夫。
それよりも本当に、もう今日で会えなくなるのか。
そればかり気になってしまって、どうにか引き留めたくて。
俺は“Aちゃんが何者であろうと仲良くしたかった”、“バレたら一緒に過ごせない？”って、必死にそれらを口にした。
「それを決める前に…カイちゃんの知らない、“AA”の話をしていいかな」
深く深く深呼吸をして、Aちゃんはそう口にした。
俺の知らない…Aちゃん。
その言葉にドキリと心臓は音を立てて、妙な緊張感がビビビと背筋を走った。
Aちゃんは心に決めたんだろう。
彼女の言葉に返事するように深く頷くと、今までにないくらい真剣な目付きをして俺を見る。
それから今から話す事は絶対に外に漏らさない事を約束させられた。
勿論、口外するつもりなんて全く無いんだけれど、秘密を知れるって…こんなにもドキドキワクワクしたっけ？
ソワソワと落ち着きが無いことがバレないように、俺はそっと座る右腿の裏に右手を滑り込ませると、キュッと自分で腿を抓った。
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作者名：千草 | 作成日時：2024年3月2日 18時
