推しの推し (ページ8)

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特定ページ8

≫A side

“元子役”という肩書き。

同級生は皆、大体私のことを知っていた。

知っていて目に見える冷やかしもあったし、色々と陰で言われていることも知っていた。

だから、私も当たらず障らずの距離感で過ごしたし、高校生活3年、演じて過ごした見せかけの友情の上には友達と呼べる友達はできなかった。

その代わりに只管続けたのは“自分を表現すること”。

ずっと歌とダンスだけは辞められなかった。

大学に進学してからは、私に対する冷やかしがゼロと言うわけでは無かったけれど、1日中“教室”という箱に閉じ込められて生活していた高校の頃に比べればずっと息をするのは楽だった。

それに、かけがえの無い推しにも出会えたのもこの頃だ。

キンプリを教えてくれた友人には感謝しきれない。

彼女との縁は今も続いていて、時折り連絡を取っては食事に出掛けたりもしている。

社会に出てしまえば、更に私の過去の事について厭に触れてくる人は更に現れなくなった。

というか…多分気が付かれていないんだと思う。

引退してから既に7年は経っているわけだし。

過去の事。

そんな風に思って、私は油断をしていた。

先日、リクエストに応えてカイちゃんの完コピ動画をアップロードし、それが見事にバズってしまった私。

しかもそれが本人まで届いてしまったのには本当に本当に驚いて、その夜は興奮して眠れなかった。

それから、変なアンチコメントとか書かれてたらどうしようって、恐々コメント欄を覗いたけれど、想像していた酷い書き込みは見当たらなくて胸を撫で下ろしたのだった。

暫く注目はされるかも知れないけれど…時間が解決すると言うか、熱りが冷める時が来るだろう。

そう思って、友人の心配もそこそこに警戒を緩めていた私の身に降り掛かった出来事。

投稿している動画内で顔全体を晒しているわけでもないし、と特定される事など1mmも考えていなかった。