推しの推し (ページ6)

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追いつかぬ状況整理ページ6

どうしよう…推しに、推しに認知されてしまった…。

まさかのまさか、私の動画を？

本人であるカイちゃんが？

見たの？

…うん、見たって言ってた…え？？

待って、待って待って。

と、突然。

着信を知らせる音楽と共に手の内のスマートフォンがバイブレーションで振動を起こした。

「わっ、なに、だれ」

驚いてハッとし、そのスマートフォンの画面を見れば、電話をかけて来たのはキンプリを知るきっかけを与えてくれたあの友人。

画面の上で指を滑らせて着信に応える。

「も、もしもし」

『あ！良かった出てくれて！メッセージで残業って言ってたから…ね！それより、カイちゃんの配信見た！？』

「あ…今まさに」

『あれ、Aの事でしょ！何バズって推しの本人にまで届いてんの！？』

「私も、びっくりして…何かいつもより沢山見てもらえてるとは思ってたんだけど…」

『いやいやいや、配信中に名指しでお礼って…本当アタシもびっくりよ…そして羨ましい』

驚きと興奮が入り混じる勢いの有る会話。

彼女は私がダンス動画をアップロードしている事を知っている。

私は彼女の言葉に、“あはは…”とただ誤魔化すように笑うしかない。

そして私達の間に一瞬だけ沈黙が降りると、ひと息置いて再び口を開いたのは友人だった。

『…ねえ、それより心配なの。これだけネットで広がったのが』

声を急激に低く暗いトーンに落として、電話口の彼女は言う。

『…大丈夫なの？』

「んー…うん…まあ、大丈夫じゃないかな？だって、目元しか分かんないでしょ？」

『…そうだけど…でも何かあったらいつでも相談ね？約束して、絶対』

「うん、分かってる。ありがと心配してくれて」

“それじゃ、また”。

そう言って友人との通話を切る。

ここで私はひとつ溜息を零した。

“大丈夫なの？”と、そう友人が心配の心を私に寄せるのには訳がある。

彼女は…私の過去を知る人のひとりでもあるからだからだ。