刃幅12.5mm ページ46
≫A side
両親含めて大人達が話し合いを重ね、その内警察が介入した。
手紙とメールの差出人は恐らく同一人物であると判断され、私は大人達の決めたルールに沿っての生活になった。
それから更に暫く経って、数ヶ月。
季節は移り変わり夏から冬へ。
移動の際の送迎が当たり前になってしまったある日。
その日は凄く寒くて、都心にも雪が積もって世界が白く染まっていた。
マネージャーさんが“何か温かい飲み物を買って来る”と言って、コンビニ前の道路肩に車を停車させると運転席から降りて行く。
私は直ぐに戻って来るだろうと思い、そのまま車内に残っていた…その時。
ガチャ、と自分が乗っている運転席後ろの後部座席のドアが突然開かれた。
「Aちゃん、」
声を掛けられて、そのドアを開けた…見知らぬ男性の顔を見る。
ひやりとした外の冷気が車内へ入って来て、その男性が纏う異様な雰囲気とシンクロすると私に恐怖感を与えた。
「だ、誰…？」
「俺だよ、Aちゃん分からないの？会いに行くからってずっと言ってたじゃん」
「ごめんなさい…分からない、」
「っ、そんな…！」
男性に対して面識が無かった。
だから、本当に何のことかさっぱり分からなくて素直にそう答えると、男性は驚いた様な、ショックを受けた様な。
言葉を失って目を泳がせる。
「やっぱり俺の気持ちは、愛はちゃんとAに届けられて無かったんだね…」
そう台詞を吐いたかと思うと突然、男性は上着のポケットから細長い何かを取り出し、カチカチカチ…と音を立ててギラリと光を反射させる鋭い刃を伸ばした。
私の目の前へと突き付けたのはカッターナイフ。
ピリッと緊張感が背を走った。
「ここ数ヶ月、まるで籠の中の鳥じゃないか…分かってる、悪いのは全部周りの大人だ。行こうA、俺が助け出してやる」
突き付けたカッターナイフを脅しに使って、車から降りる様に私に促す男性。
男性の口にしている言葉の意味はよく分からない。
困惑したまま怖さのまま動けずにいると、車外からマネージャーさんの叫び声にも似た怒号が聞こえて来た。
「誰ですか！そこから離れなさい…！」
「ああ！？うるせえ！お前がAから自由を奪った1人か！！」
車体が陰になってよく見えないが、マネージャーさんはこの目の前の男性と激しい言い合いをしている。
そして、私には“車から出ないように”とその場で叫んだ。
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作者名：千草 | 作成日時：2023年10月27日 12時
