推しの推し (ページ45)

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ピンク色の便箋ページ45

≫A side

手に取ったのは推しの…というかキンプリのライブ映像。

彼らを見れば、カイちゃんの姿を望めば…少しは楽になる気がしてディスクをプレイヤーで再生した。

少しでも気を逸らせたかった。

嫌な夢も、それによって思い出した過去の自分も。

　***

歌うことも、踊ることも、演じることも…どれもどれも大好きだった。

叶うなら、この芸能の世界でずっとお仕事をしていきたかった。

異変を感じだしたのは、“うたっておどろう！”が始まって2年くらい経った頃だった。

可愛らしいピンク色の便箋を手に、マネージャーさんが真面目な顔付きで話が有ると個別に私を呼び出した。

ピンク色の便箋は、私宛てのファンレターだったらしい。

「いつも私達サイドが、内容物を確認してから皆に手紙を渡すでしょう？それで…これ今日届いた物だったんだけれど、」

“一緒に目を通して欲しい”。マネージャーさんはそう言って私に内容を見せた。

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Aちゃんへ。

今日も可愛かったよ。

可愛い姿を見せてくれて、有難う。

本当は面と向かって君に伝えたいけれど、まだ俺にはその勇気が無くて…ごめん。

手紙で沢山愛を伝えるから、俺のことをどうか嫌いにならないで。

俺は毎日、Aちゃんの事を思って考えているよ。

この手紙を読んで、Aちゃんが俺の事を意識してくれるようになったら嬉しいな…。

いつか必ず会いに行くからね、絶対に。

愛しているよ。

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内容はよく見るファンレターというより“ラブレター”…？

こんなスタイルのファンレターもあるのだなと、かなり軽く考えていた私。

けれど、読んで顔を上げた先のマネージャーさんの表情は依然として真剣なままだった。

差出人の名前も住所も無い、何処の誰からか分からない手紙。

大人達はこのファンレターの異常さに気が付いていたらしい。

そして、私へ警戒をするよう促した。

「いい？Aちゃん、暫くは身の回り警戒して。出来るだけ誰かと一緒に居てね」

その後も度々私に対して愛を綴った手紙は届いた。

同時に、所属先事務所の問い合わせメールフォームにはまたしても差出人不明のメール。

“ファンレターはタレントの元へ届いているのか、きちんと渡して欲しい”。

そんな内容のメールが何件も届いていたらしい。