俺でよければ幾らでも ページ39
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Aさんの笑顔は、あたたかい。
まるで温かい飲み物を飲み下した時、胸元がジワッと温かくなるような感覚に染まる。
「じゃあ…今ので仲良しレベル上がりました？」
「はい、1から2になりました！」
「2か〜、まだまだじゃん〜」
ポカポカとした気持ちのまま、半分冗談混じりにさっきの席で出た“仲良しレベル”のワードを出して、ふざけて2人笑い合う。
そして笑い合った後、トーンを落としてAさんは静かに語った。
「昔に色々あって…恥ずかしながら大人になるまで友達は居なかったんです」
“昔に色々”って…また知りたくなる情報をAさんは意識せずに溢す。
今は唯一、心許せる友達が1人居るらしい。
その友人がとても心配性でいつも気に掛けてくれるのだとか。
「こうやって話したり、食事したり…その人を思って言動を図ったり。些細かもしれないんですけど、私にとっては嬉しくて」
そう言って少し恥ずかしがるAさん。
何だか俺もつられて嬉しくなっちゃうし、俺でよければ幾らでも彼女を嬉しい気持ちでいっぱいにさせたい。
真面目にそんなことを思った。
「…Aさん、またこうやって集まり誘っていい？俺“仲良しレベル”上げたいし」
“また”という言葉に一瞬戸惑ったみたい。
だけど、俺の“レベル上げしたい”って言葉が彼女の頬を緩ませた。
タクシーが路肩に停車して、アイさんは降りて行く。
“またね”と手を振って。
「悪い人じゃ無さそうで安心はした」
扉が音を立てて閉まったかと思うと、寝ていた筈のレンが俺に話し掛けて来た。
急に声がするからびっくりしてちょっと焦る。
Aさんって呼んでたこと、バレてないよね？
慌てて“いつから起きてたの？”って俺は聞くと、本当に彼女が降りた辺りと答えた。
「…連絡先ゲット出来たん？」
「え…いや、てかもう焦らないことにした。着実にレベルアップすんの」
「ふーん？レベルって仲良しのやつ？」
「そ！レンも認めてくれたわけだし、もっと仲良くなっちゃうから」
「なんなん言い方…上等上等。俺もレベル上げやったるわ」
あれ…何か俺、レンのこと煽っちゃったらしい。
本当にAさんと更に仲良くなろうとしてる？
早速別れの挨拶が出来なかったからって、俺がいつも連絡取ってるメールのアドレス教えろって。
自分で探しなよって言ったらマジになって探し出してメールを送っていた。
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作者名：千草 | 作成日時：2023年10月27日 12時
