推しの推し (ページ35)

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故に、ページ35

≫永瀬 side

「まあ、大体分かったわ。そのトラブルの後は結局、カイトが気になって連絡取って今に至るってことやろ」

「え？うん、まあ、雑だけどそう」

今し方聞いた話。

カイトは否定しないし、目の前の彼女は大方真実を話しているんやろと思う。

“事情”と言って話すの渋った部分もあったけど、それは初対面で俺が切り込み過ぎた。

謝って忘れてとは言うたけど、その表情は困った顔のままやった。

もお、てか何で先にカイトは言わんの？

例え断っても俺ここに連れて来られてた気いするし…。

この間見たメールの人やって聞いとったら、会う覚悟して来るわけやろ。

もう少し、それでももう少し態度なんとかなったやん。

さっきから目は合わん事ないけど、合った瞬間直ぐ外らされる。

猫に睨まれた鼠というか、天敵前にして畏縮しているみたいな。

あーもう…第一印象最悪な奴、俺なら絶対友達にならん。

妙に重苦しい空気感。

挽回しようにももう俺も引き下がれんくて、軌道修正も何も無い。

「あー…ごめんね、レン人見知りしてて、悪気は無い…です」

カイトがこの状況を見て声を掛けた。

すると彼女は首を左右に振って“とんでも無い”と。

「お仕事柄、人のことは先ず疑って入ってしまいますよね…」

小さな声で呟いたその言葉。

そしてその彼女のまるでかの日を思い返す様な切ない瞳。

過去に何かあった…？

シンプルにそう感じざるを得ない雰囲気を彼女は纏う。

そして俺へと視線を向け、彼女と目が合うと再び口を開いた。

「お心寄せ頂いての言葉とは分かっているので…」

言葉続けに“気を遣って頂いて有難う御座います”と彼女はそう言うのだ。

言葉の通りに受け取って良いんやったら、ワンチャン俺のこと最低最悪とは思われて無いんちゃう…？

軽い自己嫌悪に陥っとった俺は彼女の言葉に少しだけ救われたのだった。