心に留置く忠告 ページ30
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「ごめんて、何新しい友達かなんか？」
「んー、まあ…」
友達かと言われれば微妙。
だって俺、Aさんのことまだ知らな過ぎる。
そんな思いが俺の吐いた言葉に乗せられてたのをレンは気が付いたらしい。
「怪しい人ならやめとき、連むの。後で面倒なって後悔しても知らんで」
「いやいや…怪しいとかじゃ、ない…はず」
「なんなんそれ」
「…これから！仲良くなる“予定”だから…！」
「これから、て。もお、ほんまに大丈夫なん」
「大丈夫、だよ」
ぎこちなく言葉返す俺。
レンの言葉に、正直一気に不安になった。
貶める為に手の込んだ事をしてくる輩とか、色んな目的で俺らに近付いてくる人はいる。
だからレンに限ったわけじゃ無く、色んな人から人付き合いには気を付けるよう言われていた。
Aさんが何者かはまだよく掴めていない。
仲良くしたい気持ちと、俺の言葉に対して見せてくれた彼女の笑顔を信じたい気持ち。
レンの一言で、そこへ僅かに疑念が生まれたのは確かだった。
***
約束の某日。
貸しスタジオでそのダンス仲間、Mobuoと落ち合った俺は、Aさんがこの場に現れるのを待った。
その間俺ら2人ふざけて踊り合ったり、お互いのSNS用の写真や動画を撮り合ったりして過ごした。
Mobuoが“トイレ！”と言って、一旦スタジオの外に出て行って10分。
やけに遅いなあと思っていたらスタジオ出入り口の戸が音を立てて開いた。
「ねー、カイト、この子もしかして例の？」
そう言うMobuoの手に引かれて彼の後からスタジオに入ってきたのは、正しく到着を待っていたAさんだった。
「え、何で手繋いでんの？」
今日会うの初めてって言っていたのに、距離の詰め方おかしいって。
“スタジオの前でウロウロしてたから声かけちゃった”じゃ無いし。
入り口に佇む男女2人の光景が俺には衝撃的で、嫉妬という程じゃないこの何とも言えない感情が湧いてきて笑ってしまう。
率直に思ったことを笑いながら口にして2人にツッコんでしまった。
Mobuoにペースを掻き乱されたままではいられない。
俺は切り替えるようにして2人に互いを紹介する。
「えっとMobuo、あのバズった動画の投稿主。ただの社会人さん」
「初めまして、Mobuoです。いやー、ずっとバズった動画見て気になってたんです、ただの社会人さんのこと」
漸く手を離したMobuoはAさんに向き直って“宜しくお願いします”と頭を下げた。
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作者名：千草 | 作成日時：2023年10月27日 12時
