推しの推し (ページ24)

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腹心ページ24

≫A side

「歳も近いし、見てたんじゃない」

「え…そうかな」

「私だって見てたもの、“うたっておどろう！”。Aは、私含めて周りの友達も…皆んなの憧れだったよ」

「やめてよ、恥ずかしい」

「子役とは言え“実質アイドル”だったよ。まさか大学入って初めて出来た友達が“ニコちゃん本人”とは思わなかったけれどね」

高校時代までの同級生らとは違い、友人は私の正体を知っても…寧ろそんな事関係無いくらいに“普通に”接してくれた。

…といっても、彼女に出逢うまで“友達としての普通”を知らなかったわけだけれど。

友人と一緒に居る時は違和感や疎外感を感じることはない。

“友達”とはそれが普通なんだ、と二十歳手前にして漸く知った。

友人曰く、“幼い頃の憧れの人を前にして、友達にならない選択肢は無かった”らしい。

それはさて置き、だ。

当時を思い出しながら語る彼女に私は、水を刺すように声を掛けた。

「それで、続きがあって…また会うことになったの」

「え、まあじ？なんで」

私はコンタクト用に開放しているメールアドレス宛に連絡が来た事、そしてその内容を話した。

あの夜の後の様子を心配してくれていた事。

私がカイちゃんに気がついていた事。

とんとんと話が進んで、今度私の振りで踊ったダンスをカイちゃんが踊りたいと言っている事。

「想像だけど、私がカイちゃんのダンスを踊ったから、今度は向こうが私のダンス踊ったら面白いって思ったんじゃ無いかな…」

なるほどねぇ、と友人は呟いた。

だって、今の所考えられる理由はそれくらいしか思い浮かばない。

私はただのOL、趣味特技の延長で踊ったり歌ったりしているだけの一般人。

何もコネ、ツテも無いわけで、変な話“何かしらの謀が有るのでは無いか”という線は非常に考え難い。

やっぱり話題になった延長で興味持たれただけだと思うのだ。

「じゃあ“ただの社会人”として行くのね、ファンである事はバレているけれど」

「も、勿論…そこは自制します」

友人は大きく反対の声は上げなかった。

寧ろラッキーじゃない、と喜んでくれている。

そして友人はやはり私の心配も忘れない。

「ただ…やっぱり気をつけなね、相手側はAが元いた世界の人達なんだから、正体バレたりは面倒よ」

言う通り、今の当たり前の生活が一変する恐れだって考えられるから。

掛けられた言葉を戒めに浮かれ過ぎず、慎重に会いに行く事を心に決めたのだった。