推しの推し (ページ21)

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長居に2杯目ページ21

≫A side

貸しスタジオで次にアップロードする予定のダンスの通し練習をメインに、一応撮影もしたところで利用時間が経過した。

一通り片付けて荷物を持ってスタジオを退室した後、向かったのは近くのチェーン系喫茶。

電源が確保出来るテーブルを確保して、背負って来ていたノート型パソコンを開いた。

撮って今日中のアップロードは厳しいと思う。

けれど、粗方の形までは編集しておきたいと思い黙々と作業をして1時間。

区切りの良いところでひと息つこうとカップに手を掛ければ、もう一口で終わる量だけ底に残っている。

微妙に残っていたコーヒーを飲み切って、お代わりを注文して受け取る。

席に戻ってひと息ついでにスマートフォンに視線を落とした。

「…え、」

思わず小さな声で困惑の気持ちを口にした。

メールチェックをしていて、またも見つけてしまった。

あ、あの…カイちゃんから更に返信来てるんですけど…。

同じ件名にまたも“Re:”が付いた未読のメール。

え、何々…どう言うことなの。

急激に心臓はドキドキと音を立てて、呼吸もちょっと浅くなる私は明らかに興奮していることが分かる。

一度返したあの返信で、てっきりやり取りは終わりと思っていたから尚のこと。

お、落ち着こう。

送信ミス…だったりする可能性も有るよね？

胸に手を当て一度深呼吸をし、そおっとそのメールをタップして内容を展開した。

内容としては、ファンだったから気が付かれたことに納得がいき、暫くは気が付いていない振りをしてくれていたことに対して寧ろ感謝の言葉が添えられていた。

トラブルの一件にも触れ、同じような迷惑行為に遭遇していないことに安堵したと。

…優しい、優し過ぎる。

“俺に対して寧ろ配慮してくれていて、有難うございます”、じゃないよ。

結果私はちゃっかり名前呼んでいて…。

自分のあの時の様子を思い起こして、自然と眉間に皺が寄った。

画面を更にスクロールしてまだ文面に続きがあることに気が付く。

“相談なんですが…”と。

一体何かと思い読み進めて行って、私はまた目を丸くするのだった。