Drop you a line. ページ18
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あの日から何で俺の名前知ってたんだろうと。
ふとした瞬間に彼女を思い出しては、延々とそれが頭の中を巡った。
時間が出来れば気が付くと、俺はまたただの社会人さんの【踊ってみた】を再生している。
彼女は、今何処で何してるだろう。
また変な人に会ったりしていないかなって心配になったりして。
そんな時、ただの社会人さんの動画投稿チャンネルの概要ページから、コンタクト用のメールアドレスを見つけた。
このメールアドレス宛にメッセージを送ったら、ただの社会人さんは目を通してくれるだろうか。
個人的な連絡先は当然ながら知らない。
あの夜、連絡先を訊ねるなんてそういう感じは無かった。
あの場限りの出会い、付き合いという雰囲気が俺達の間に暗黙の了解の様に漂っていて、それは何か察したお互いが分かっていて聞かぬ選択をした、という感じだ。
ところが俺は今、その選択を後悔していたりしていて。
見つけた唯一の連絡手段、眼前のメールアドレスと睨めっこをしている。
そもそも勝手に個人的に送ったら、エラい人に怒られるかな。
や、でもあの出来事自体は個人的なプライベートで起きたハプニングだし…俺は人助けしただけ。
それを怒られる事なんてこと…無いよね？
それで“その後大丈夫？”って聞いただけ…よし、コレで行こう。
あれから変わりないですか？
勝手ながらに心配しています。
あの夜の事を綴り、敢えて“タカハシより”と文末に加えて送信した。
次の日。
仕事の合間にメールチェックをすると、DMでも無いフリーアドレスからのメールが1通。
件名には覚えがある、俺が昨日社会人さん宛てに送ったメールの件名と同じ。
“Re:”と返信を意味する文字が足されている。
“ーーその節は、”から始まる文言。
それは不思議と彼女の声で頭の中で再生され、そして読み進めていてあるワードに目が留まった。
「え…ええっ？」
隣に座って自身のスマートフォンに視線を落としていたレンが、俺の驚いた声に反応する。
「なにぃ？急に…何かあったん？」
「え…いや、何も」
同時にレンは俺の方を向く。
覗き込もうとしたわけじゃ無いだろうけど、つい反射的にスマートフォンの画面が視界に入らないように避けた。
その動きが少し不自然だったかも。
誤魔化してレンの意識が俺から離れた時、もう一度届いたメールの本文に視線を注いだ。
見間違いじゃない。
ただの社会人さんは…俺のファンらしい。
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作者名：千草 | 作成日時：2023年10月27日 12時
