本音 ページ15
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「ダンスはいつからやってるんですか？」
そんなんで振った話題は結局、彼女がアップロードしているダンス動画についてだった。
「あ…ダンスは子供の頃からやっていて、」
「へぇ、そうなんすね！俺も実はちっちゃい頃からダンスやってて…一緒ですね」
別に、俺も俺で自分の立場を明かそうとは思っていない。
だけど、“子供の頃から”と聞いたら俺も一緒！って言いたくなっちゃった。
「辞めるに辞められなくて、この歳までダンスやってます」
ちょっとばかり嘲るように社会人さんは言う。
「“この歳”って、今幾つです？あんま変わんないと思ったすけど、」
「今年で25、なりましたね」
「…25？嘘、やっぱ近いすよ、俺24！いっこ先輩かあ」
そこでふと、女性に…というかネットで活動してる人に年齢を聞いて大丈夫だったろうか。
答えてくれたけど…でも、気にする人いるよね？
「あ…成り行きで歳聞いてすみません、」
「え、全然！気にしないでください、私が話題の種蒔いたようなもんですし」
ふふっ、とマスク越しに笑う彼女。
目元だけだけど、綺麗に笑う人だ。
その素顔が、見てみたい…なんて。
会ったばかりで思ったのは秘密。
切り替えてまた別の話題を俺は振る。
「え、“ただの社会人”さんは本当にただの社会人？何かダンスをお仕事にされたりしてるんですか？」
「あー、そう…本当にただの社会人ですよ。一般企業勤めです」
「えー！そっか、そうなんすね。俺、動画見てダンス上手でびっくりしました。てっきりお仕事にされてるかと」
そう言う俺に目を向けて、彼女はそっと“そんな全然…でも、ありがとうございます”と謙遜混じりにお礼の言葉を述べた。
そして視線を俺から外して、どこか遠くを見つめてしまう。
「…ダンス、仕事に出来たら良かったんですけどね」
声色が心なしか寂しく、悲しげで。
言い方も歯切れの悪いような感じ。
俺、何かまずい事聞いたのかな。
「なんか、すんません…」
「え…？何で謝るんですか？」
「いや…社会人さん、寂しそうだから」
「あ…そ、そんなこと無いですよ〜！」
あ、今度は無理して笑ってる…？
打って変わって明るい声色と身振りで俺の言葉を否定する隣の彼女。
マスクの下の口元は見えずとも、唯一見えるその目元と雰囲気で俺にはそう感じた。
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作者名：千草 | 作成日時：2023年10月27日 12時
