夏みたいな女の子 ページ46
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離れていた3年間、もしかしてそんな時間なかったんじゃないか。
そう思えるほどに君は昔みたいな笑顔を向けてきた。
微笑み返してから少し目線を外すと、肩くらいだった髪は背中まで伸びていて、薄っすらとしたメイクのせいか高校生の頃よりも大人びて見える。
僕にとっての夏はAだ。
儚く消えそうで、溶けそうで、でも俺を夢中にして離してくれない。
かと思えば不意に眩んで無くなっていく。忘れたふりなんてできなくて、忘れたつもりになっても気がつくとまた目の前に現れて。
本当に、夏みたいな女の子だ。
「…紅茶でいい?」
「あ、うん!おかまい、なく?」
「……なんか、変な感じだな」
いつもお互い無遠慮に過ごしていたから、改めて大学生になった今、大人らしく振舞うのがもどかしい。
サイダーとポテトチップスで一晩過ごしていたあの頃が懐かしいな。
「颯くんが一人暮らし…」
「Aもじゃないの?」
「や、そうだけど!そうだけどなんか、変な感じ」
なんて返せばいいかわからなくて、すぅっと2人の間を通り抜けていった天使は、微妙なタイミングを置いていったみたいで、なぜか2人同時に笑ってしまった。
少し気負っていたけど、なんだ、今まで通りじゃないか。
耳に髪をかけてティーカップに口をつけるAを見て、あいも変わらず好きだなぁと思う。
でもずるくて弱虫な俺は、一度掴んだ腕は離したくないくせに振られる勇気もなくて、ただ引き止めようとするだけ。
「東大王、いま新メンバー募集中だからさ。
申し込んでみてよ」
「私じゃ実力不足だって!」
「俺が言うんだからいーの。
早稲田チームで出てた人が東大王になるってネタにもなるでしょ」
「叩かれて終わりだよ!どうせロンダリングとか言われてツイッターで笑われるのがオチだよ…」
「それはないと思うけど。俺は出てほしいな〜」
潤んだ瞳がじっとこちらを見つめてくる。
ああ、可愛いな。なんて語彙も何もない感想。
わざと笑って見つめ返すと、観念したように頷いてくれた。
ずるいけど、そんなのわかってるから。
もうちょっとだけ、勇気が出るまで、ずるいやつでいさせてほしい。
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沙月(プロフ) - な、僕の初めて覚えて、好きな百人一首じゃないか...つられて読みにきたらおもしろい...お気に入り登録させていただきました! (2019年9月25日 22時) (レス) id: b7d8d46a43 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - すぺるさん» わあああ!!!!!できました(;-;)ありがとうございます恩人です本当にありがとうございます(;-;) (2019年8月10日 22時) (レス) id: b994d8a981 (このIDを非表示/違反報告)
すぺる(プロフ) - 続編は、前編の編集ページの最後らへんに挿入部分がありますよ…! (2019年8月10日 21時) (レス) id: bc24737c16 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - マロンさん» ありがとうございます;;調べたところそのような事例もあるようなのでご都合主義が過ぎますが、修士を飛ばすという形にさせていただこうと思います。参考になりました!本当にありがとうございます! (2019年7月27日 8時) (レス) id: b994d8a981 (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - はじめまして。大学院の制度ですが私の高校の時の恩師が大学卒業後修士をすっ飛ばして博士に通ってました。学校によるのかもしれませんがそういう制度があるにはあるみたいです。ただし審査がとても厳しいみたいですが… (2019年7月27日 0時) (レス) id: 84c575c695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そら | 作成日時:2019年7月20日 8時