プロローグ ページ1
私は生まれた頃から身体が強いわけではなかった。人より小さく、力も平均よりは弱い。
家庭も裕福ではなく至って普通の家庭だ。
昔からあまり幸せなことなどなかった。人並みに何をしても身体が弱く満足にできない。直ぐに死ぬような、命に関わるようなものではなかったが幸せでなかった。苛められもしたけれど、生きていればいつか幸せになれる。そう信じてずっと出来ないなりに頑張ってきた。
そんなある日、それは唐突に訪れた。
住んでいた場所で鬼が現れたと叫び声がと悲鳴が上がったと思えば、付近の者は殺されていった。
刀を振るえば瞬時に周囲が一刀両断されていく。皆、瞬殺されていく。
それは等しく私にも訪れる…はずだった。
今までの不幸のツケが今更ながら帰ってきたのか。射程圏内にいたにも関わらず私は奇跡的に片方の肩から腕の切断だけで生き残った。
切られた瞬間、ドサリと倒れ込み、血が溢れ出す。奇跡的に一命は取り留めたが、いずれにせよこの出血が続けばもう間も無く私は死ぬだろう。
もう歩く気力もなく、酷い出血で意識が朦朧とする目ももう霞んで見えない。
そんな中、誰か人影が近づいてきた。
「ほう…生き残りがいるか…丁度良い…。人を食う鬼となっても…生きたいか…。」
そうか、この人が鬼と騒がれていた人…。
人間じゃなくてもいい、私は…まだ、何も生きているうちにできてない、幸せになってない。まだ、生きたい。
「鬼になってもいい…死にたく…ない…たす、けて…」
いいだろう…あの方のお方からの血…ほんの一滴お前に分け与える…
その血が傷口に溢されたと同時に、悶絶するような鋭い痛みが身体中を襲う。そうして、私の意識は暗転した。
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作者名:リナ | 作成日時:2020年12月14日 2時