一度、出逢ってしまったら[完] (ページ22)

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『…私は、北斗が好きなんだよ。ずっとずっと…北斗だけだったんだよ』

でも北斗は"私"を見てはくれない。

キスも快感も、もう数え切れないくらいくれたけど、一番欲しい"好き"だけは一度もくれた事はない。

『…あ～。もうほんと分かんない、、』

北斗以外はいらない。北斗さえ居てくれたら良い。

そう思い続けてきた私の中に意図も簡単に入り込んできた樹さんはやっぱり経験が豊富だからなのか。

それとも私が単純なだけだろうか。
…これから、どうすれば良いんだろう。

いくら考えても分からなかった。

──でも、これだけはハッキリしていた。

北斗からの久しぶりの

北斗明後日、家行っても良い?

というメッセージに胸が高鳴らなかった事だけは。

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『いらっしゃい』

「おじゃまします」

そして予定通りに家に来た北斗。

「あー何かすっごい久しぶりにAんち来た気がする」

『ふふ。実際、久しぶりだよ？』

来るまでは、どうしよう。なんて思ってたけど会ってしまえば案外普通に話せて。会えて嬉しいとも思った。

「…A。きて」

ソファに座る北斗に呼ばれて行けば手を引かれポスッと北斗の胸に抱き寄せられる。

…あ。北斗の匂い。
トクンと胸が高鳴った。

「…ん～。癒し」

『…ふふ。わんちゃんみたいだね、北斗』

グリグリと頭を押し付けてくる北斗は可愛い。
堪らずフワフワの頭を撫でる。

「…ダメ？」

『ダメじゃないよ。可愛い』

今、北斗のこんな甘えてくる姿を見られてるのはこの地球上で私だけ。

今、北斗の腕の中に居るのもこの私。
そんなの嬉しいに決まってる。

…うん。私はやっぱり北斗が好きだ。
この前は絆されちゃっただけ。

北斗が私の全てなの。北斗しか必要ない。

そう、確信した。──はずなのに。

『…ね、ほく、』

「…ふふ。そんな顔しちゃって。可愛いのはどっちだよ」

"今度、そんな顔したら──"

フッと脳裏に浮かんだ彼の言葉と彼の顔がそんな私の心を引き戻そうとするから。

「……A？」

『…え、あっ、、』

北斗の顔が近付いてきた瞬間、思わず逸らしてしまって。

少しピリッとした空気感が部屋の中を漂った。

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