一度、出逢ってしまったら[完] (ページ15)

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「っつーか、めっちゃ美人になってない？」

「俺も思った。最初分からんかったもん」

『いやいやいや……』

菊池さんと渡辺さんに誉められ謙遜してれば、邪魔んなるし奥行くべ。って田中さんに言われるがまま連れて座らされる。

…あれ？私ってこんな押しに弱かったっけ。

「っつーか、この子、北斗の彼女じゃねーよ」

しかも早々に暴露されるし。
田名さんをキッと軽く睨み付けた。

「え、嘘でしょ？」

「マジだって。⋅⋅⋅オトモダチ。なんだと」

…やっぱりこの人、嫌だ。
たちが悪いよ。

「……へー。北斗もやるねぇ」

田中さんの発言に、たちまち目の色が変わる菊池さん。
…もしかしてこれが目的なの？

「やめとけって、風磨。ビビってんじゃん」

「え～。でも女の子のスーツ姿ってそそらん？」

「アホか」

渡辺さんが嗜めてくれるけど私をなめ回すように見るのを菊池さんはやめてはくれない。

…あー。やだな。仕事帰りにそのまま来るんじゃなかった。
とゆーか、このお店にするんじゃなかった。

どうやって逃げよう。

と、必死に頭を回してるとファサっと肩に掛かった何か。…ん？服…？

「何だよ、樹」

「やめとけって言ってんだろ」

ごめんな。と申し訳なさそうな田中さん。

肩に掛けられたジャケットからバニラのような甘い香水の匂いがして、これは田中さんのものだと認識する。

…あれ？もしかして助けてくれた？

「それに無駄だよ。…この子、北斗しか見てねぇから」

そう言う田中さんは何でかどこか寂しげで。
私も何故かそれを見て胸がギュッと締め付けられた。

「……ふぅん？そゆことね」

「え、樹マジ？ちょい待って。パニックパニック、」

「うるせぇな。黙って飲んでろ」

何かを理解したらしい菊池さんと渡辺さん。
でも私には何も分からなかった。

この時の自分の感情が何なのかも。

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「んじゃ、またな～」

「送り狼すんなよ、樹～」

「するか！」

その後、暫くして解散に。
渡辺さんと菊池さんはタクシーで帰って行き、私は田中さんに送って貰うことになった。

ちょっとだけ話せない？と言われて。
断っても恐らく無駄だと悟ったから。

「、後ろかよ」

『当たり前です。撮られでもしたらどうするんですか』

後部座席に乗り込むと顔をしかめられた。
…自分がアイドルって自覚ないんだろうか。この人。

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