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言葉を遮るようにAの唇が俺の唇に触れて。少し驚く。
『良いの。…だって私は、北斗のでしょ?』
こんな沢山、印あるんだもん。って嬉しそうに赤い痕を撫でるから、堪らずまた首筋に吸い付いた。
『んっ、』
「…ねぇ、A」
『っんぁ、な、に…?』
居なくならないでね。そう耳元で囁くと、そのまま耳朶にも吸い付いて印をつけた。
「消えちゃいそうだから。あなた」
『…それは北斗の方じゃない?』
その言葉に何も言えなくなった。
Aは気付いてる。俺が、まだあの人を。奈津美さんを忘れられていないことに。
…傷付けてるのは分かってる。
それなのに離してやれない俺は酷い男の部類に入るだろう。
それでも、俺は──
『…私は居なくならないよ。北斗が居る限りどこにも行かない』
君のその言葉に、優しさに甘えてしまうんだ。
「…A。もっかいシよ」
こんな俺でごめん。
でも、今の俺はまだ弱いから。
君が居なくなったらきっと俺は壊れてしまうから。
『っぁ、ほくっ⋅⋅⋅、北斗っ、、』
「はぁっ、…もっと。もっと呼んで。A、」
だからまだ、誰のものにもならないで。
俺だけのものでいてよ。
ずっとどこにも行かないで。──Aだけは。
罪滅ぼしなのか、それとも彼女の身体を労ったのか。
今までで一番と言っても良いくらい俺は彼女を優しく大事に抱いた。
…多分怖かったんだ。
そうでなければ俺の元からが離れていってしまうんじゃないかって。
最低だよな。俺。
それでもまだ俺は君から抜け出せそうもない。
……ごめん。
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作者名:つばさ | 作成日時:2021年5月5日 20時