五条悟から全力で逃げる婚約者

五条悟に見つかる婚約者弐 ページ11

「お父様は何か言ってた？」
「…お嬢様に迎えに行きたかったが、緊急会議がある。すまないと伝えしてくれと言われました」
「気にしなくてもいいのに…これからは日本にいるんだしね」
「ただ…お嬢様が京都に住まわれると聞いていらしたので、残念がられておりました」
「…そこはしょうがないわよ…私の知識が活かせれる部門は京都支社にしかないんだから」
まあ、他でも大丈夫だけど建前だ
東京にいて仮にもあの人に出会ってしまったりしてみろ
傷は癒えたけど、まだ完全には塞ぎきれてないんだから

「…早く結婚しよ」
「…………」
ぼんやりと眺める景色は懐かしく、古民家が建ち並ぶ道に泣きそうになった
思わず呟いた声は彼女に届いたのかは不明だけど

「今後もご贔屓に」
「ええ…こちらこそ当方をよろしく頼みますわ」
堅苦しい会合を終え、ようやく休みだ
奇しくも今日は12/24だけど
日本では恋人の日とも言われている故に浮足立つ世間
「お嬢様、本日はこのホテルで予約をお取りしております」
「え？なぜ？普通に帰ればいいじゃない」
ここは京都の市内から少し離れているが、京都市ではある
そのまま自分の部屋で休みたいところなのに
「お嬢様、本日はこちらでお願いします」
「…珍しく引かないわね」
彼女は基本、私には甘い
昔もそうだった
何かあるごとに私を優先してくれた
留学に行った瞬間、彼女にどれだけ助けられていたか思い知らされたのだけど
「本日は絶対にこの部屋から出ないでください。私は旦那様の仕事を変わりにしてまいりますので、しばらく留守に致します。が、他の使用人はおりますので何かあればお伝えください」
「…分かった」
どこに行くのだ…とは聞かないほうがいいだろう
まだまだ私にはフォローできない部分が多い
彼女がするほうがいい仕事なのだろう
「今日は何かをみても見て見ぬふりをしてくださいね」
「留学の時と一緒でしょう？大丈夫よ。スルーするのも慣れたから」
「そうですね。それではお嬢様、私はこちらで失礼させていただきます」
「ええ…気を付けて」
「お嬢様もお気をつけて」
失礼いたしますと彼女はいつも以上に綺麗なお辞儀をして出て行った

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