そして、青空へ墜ちていく (ページ5)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:2,498 hit

3 ページ5

いつも自分の持論や主張ばかりべらべらと喋っていて全く何の役にも立たない講義で辟易していたのだが、その日はいつにも増してそれが酷かったのを覚えている。

その講師は、受講生に対して『障害者という言葉は差別用語であり、正式には障がい者というのが正しい』等と説明したのである。いくつもある障害者に対しての法律から制度に至るまで、障害者は障害者と書かれているにも関わらずだ。

自分はせっかく高い授業料を払って勉強に来ている受講生達が、誤った知識を植え付けられてしまうことにひどい憤りを感じたのだ。自分達の勉強する姿勢も大事だが、講師はその授業料に見合ったものを学生に提供することも同じくらい大事たと自分は思っている。

だから、嘘を教える講師が許せなかったのかもしれない。

自分はその講師に、主張と事実がぐちゃぐちゃになってしまっていることを指摘したのだ。だがそれがいけなかったのだろう。
講義の後半になって、うっかりマナーモードに設定し忘れた自分の携帯電話に、運悪く電話がかかってきたのだ。

どうしようもなく携帯を鞄から取り出そうとしたのを、その講師は「講義中堂々と電話をするような不真面目な学生」として自分を批判し、二度と講義を受けるなと叱責して自分を教室から追い出した。
自分の二つ隣りに座っていた女子学生が机の陰でせっせと携帯の画面を操作していたのは講師の目に入らなかったらしい。

あの講師は医学科の自分に自分の講義のミスを指摘されたことがよほど気に入らなかったのだろう、追い出した教室の扉を閉めようとする講師の顔はいやらしいほどにやついていたのだから。

なんて馬鹿馬鹿しい理由なんだろう、そう閉められた教室の扉の前で腹立たしく思う同時に、自分の想像していた大学という場所が粉々に砕かれていくのを感じていた。

自分が大学という場所に諦観した一瞬だった。それ以来、自分は大学という空間に意味を見せずにいたのだ。