第93話 唯一無二の存在 ページ9
パピルスside
博士は、申し訳なさそうに答えた。
「パピルス…ごめんね。私は確かに、昔の彼のことを知っているけど…彼が貴方に話さずにいることを、私が勝手に話すことはできないの…」
「ッ…なら、せめて理由だけでも教えてくれないか…?」
家族なのに…たった二人の兄弟なのに。隠し事なんて、寂しいではないか。
「オレさまは…そんなに頼りなくて、信頼できない弟なのか……?」
「……」
俯いたボクの肩に、遠慮がちに、でも優しい博士の手がそっと添えられた。見上げた視線の先には、真剣にボクを見つめる彼女の瞳があった。
「ねえ、パピルス…。貴方は、彼のこと、信頼してる?」
「えッ…?」
唐突な質問に、ボクは一瞬戸惑ってしまう。
信頼しているか、だって?そんなの、決まっている。
「勿論だッ…!オレさまは、我が兄のことを信じているし、大切な家族だと思っているッ!」
すると彼女は柔らかく目を細めた。
「うん…彼も、貴方と同じ気持ちだよ。貴方のことを信じているし、誰よりも大切に思ってる」
「それなら、どうしてッ…」
「パピルス、あのね…。本当に大切に思う相手だからこそ、言えないこともあると思うの…」
「ニェッ…どういうことだ?」
「例えば…もし貴方が怪我をして、それを彼が見たらどんな顔をすると思う?」
ボクが怪我をしたら…兄はきっと心配そうな顔を向けるだろう。それを想像すると、ボクは胸が締め付けられた。
「…きっと、そういうことだよ。彼は貴方にそんな顔をして欲しくないから、言わないんだと思う」
「……しかしッ…」
今まさにボクは心配しているのだ。しかし、彼女はこんなことを言った。
「前に、彼が言っていたの。‟どんなことがあっても、弟が笑っていると元気になれるし、いつも支えられてるんだ”って…」
「…!サンズが…?」
「うん。だから…もし彼が心配なら、敢えて何も聞かずに、傍で笑ってあげたほうが私は良いと思うな」
「…そう、なのだな…」
兄がボクのことをそう思ってくれているなら。ボクの笑顔で、少しでも兄を元気にできるなら……ボクは。
「わかったぞ!この偉大なるパピルスさまは…我が兄の為なら、いつでもとびきりの笑顔でいようッ!唯一無二の、このグレートな笑顔でねッ!」
「!うん…!」
それに…今はダメでも、いつかは話してくれる日が来るかもしれない。
その時が来るまで、信じて待とうと、ボクは強く心に決めたのだった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時