第123話 抱擁 ページ43
Aside
追い付いた私の目に飛び込んだのは、フラウィがデイビッドからカードを奪い、地面を崩壊させていく光景だった。
しかし、やめてと叫びながら無我夢中で彼にしがみつくと、意外なことに彼はあっさりと動きを止めた。
地響きが収まり、その場の誰もが彼の様子に戸惑い閉口する中、彼は力なく呟いた。
「ハハ、おかしいなぁ……。初めは、このカードを使って、邪魔者をみーんな消してやろうと思ったのに……」
彼はカードから手を離した。それはひらりと地面に舞い落ちて、サンズにより拾い上げられる。私は一度サンズと目を見合わせ、危険が無さそうなことを確認すると、再度フラウィに向き直り、尋ねた。
『今は、そうしないって、思ってくれてるの?』
彼は悲し気に俯いた。弱弱しいその姿に、小さなヤギの彼の姿が重なり、私は胸が締め付けられる。
「……キミに触れられた時、やけに暖かい感覚がして……それでわからなくなっちゃった。何だか、変な感じがずっと伝わってきて……本当におかしいよ。何なの、それ」
『!それって……』
彼は私の手に握られた小瓶を見つめ、怪訝な表情を浮かべている。私はもしかしたらと思い、後ろに立つトリエルさんたちに振り返り、しっかりと頷き合った。
『フラウィ……ううん、アズリエル』
「っ!それは……」
『これでもしかしたら、アズリエルの心を取り戻すことができるかもしれない……!だから、お願い。どうかこれを受け取って欲しい……!』
私が二人のソウルを差し出すと、彼はそれの正体を悟り表情を一変させた。そして、とても困惑した様子で二人を見つめる。
「まさか……王様とおばさん、の……?どうして……理解できないよ!」
「アズリエル……私たちにとって、アズリエルは大切な息子なんだ!」
「貴方が戻ってきてくれるなら……その為なら私たちは、どんな犠牲だって払うわ!だからお願い、アズリエル……」
「っ……」
二人はそっとアズリエルに近付き、抱き締めた。彼は体を震わせ、二人を押しのけようとしたけれど――
「……。ホント、バカじゃないの……?……ああ、何でこんなに、あったかいのかな……」
彼は震える瞳を閉じ、やがてその腕をそっと降ろしたのだった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時