第120話 揺れる心―前編― ページ39
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静寂に包まれた城の奥から、突如としてフラウィの怒号が響き渡る。怒りの感情をむき出しにしたようなその声は、彼の前に立ちはだかるサンズへと容赦なくぶつけられた。
「話だって……?冗談じゃない!クソッ……あと少しだったのに!」
「ということはやっぱり、お前の目的は‟こいつ”か」
悔し気に顔を歪める彼に対し、サンズは毅然とした態度を崩さないまま、自身の背後を一瞥しつつそう切り返した。サンズの本気の力を知るが故に、彼の視線にすっかり気圧されたフラウィは、思うように動けないもどかしさに苛立ちを募らせる。
だが、現状ではどうすることもできないと悟ると、やがて諦めたように息をつき、苦々しげにサンズを見上げ吐露した。
「……ああ、そうさ。ボクは確かにそれを狙っていたよ。パピルスやお前が邪魔しなければ、今頃ボクは力を手にすることができた!」
サンズは弟の名前に一瞬苦い表情を浮かべるが、つとめて平静を保ち、静かにフラウィへ語り掛けた。
「お前が力とやらを手にして、どうしたいのかはオイラたちにはわからない。でも、今のお前の様子じゃあ、少なくともそれがこの世界にとっていい方向に動くとは思えないのも確かだ。なあ……一旦落ち着かないか?こいつでも飲みながらさ」
サンズは懐からボトル入りケチャップを2本取り出し、フラウィに片方を差し出してみせる。
しかし、フラウィは拒絶するように蔦でそれを弾き飛ばした。
叩きつけられた拍子にボトルの蓋が外れて、ケチャップが床にまき散らされる。じわじわと、ケチャップの赤が地面の黒と混じり合う様は、膨らんでいく彼の怒りを表すかのようだ。
「あーあ、折角のとっておきだったのにな」
「ふざけるな!!お前……ボクをからかって楽しいのか!?」
「からかってなんかいないさ。でも、そうだな。回りくどいやり方は無しだ。きちんと言う」
サンズは無事に残った方のボトルをしまうと、真剣な表情でフラウィを真っ直ぐに見つめた。
「オイラはただ、お前に……ずっと謝りたかったんだ」
「……。……は?」
あまりにも想定外な彼の言葉に、フラウィは意表を突かれ固まった。とても困惑した表情を浮かべるフラウィに、サンズは神妙に語り続けるのだった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時