第97話 兄弟 ページ13
Aside
「…よお、待たせちまったな」
暫くして遺跡から出てきた彼の表情は、笑顔ではありながらも、まるで何かに耐えているように見えた。その様子に、私は漠然とではあるが、きっと何か重要なことがあったのだと察した。
『…サンズ、…』
「ん?何だ?」
『あ、いや…何でもない!じゃあ、そろそろ帰る?』
「そうだね!ここにずっと立ちっぱなしだったから、寒くなってきたよ…」
「…ああ、悪かったフリスク。すぐに、送ってやるからな」
私は彼に“大丈夫か”と言いかけて、やめた。何故なら彼は、私たちに対し普段通りに振舞っていて、まるで“聞かないでくれ”と態度で訴えているように感じたからだ。
彼の気持ちを尊重したいという思いから、私も彼に、つとめて普段通りの笑顔を向けたのだった。
そうして私たちは、彼の近道によりすぐに帰宅した。すると、先に帰っていたパピルスが、私たちを見て笑顔になった。
「おお、三人とも戻ってきたのだな!ニャハハッ、おかえりだぞ!」
「ああ、ただいま、パピルス」
『ただいま!』
「パピルス、寒かったよ〜!そのマフラー、ちょっとだけ借りてもいい?」
「なんと…風邪をひいては大変だ!このマフラーで、すぐに温まるといいッ!」
「ありがとう!」
膝元に泣きついたフリスクを、彼は暖かく受け入れた。その微笑ましい光景に、私もサンズも笑みを浮かべる。
そんな中、ふとパピルスがこちらを見た。正確に言えば、彼の視線はサンズに集中している。サンズは唐突な弟の視線に、不思議そうな表情を浮かべた。
「どうした、パピルス?」
「サンズ……我が兄よ」
パピルスは優しく彼の名を呼び、とびきりの笑顔になった。そして、絶対的な自信を持った声で、こう言った。
「サンズは、何があっても絶対に大丈夫だ!オレさまは信じてる……何故なら、この偉大なるパピルス様がサンズの弟であり、サンズがオレさまの兄なのだからなッ!ニャーッハッハッハッ!」
「…っ!」
サンズは彼の言葉と笑顔に、目を見開き、肩を震わせた。
その光景に、私は確信した。パピルスのその笑顔が、サンズの心を一瞬で照らしたのだと。だって、隣に立ち尽くす彼は今まさに、とても嬉しそうで、泣きそうな顔をしているのだから。
ああ、私は本当に、パピルスには敵わないのだと思い知らされた。
「……ありがとな、パピルス。本当に…」
サンズは顔を俯かせ、何度も何度も、彼に感謝を告げるのだった――
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かしわ(プロフ) - ラヴさん» ラヴ様 長期間お待たせしてしまったにも関わらず、暖かいお言葉で迎えて下さり、大変恐縮です……! このような私をご心配頂いて、本当にありがとうございます! これからこつこつと更新頑張って参ります! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - もちりのさん» もちりの様、初めまして。長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。大好きだなんて言って頂けて、激励のお言葉まで……とても嬉しいです。ありがとうございます!こつこつと更新していければと思います! (2022年6月5日 11時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - レーニャンさん» レーニャン様 会話になってしまうかもと思い、返信を避けてしまいましたが、やはり返信させてください。 本当にお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。激励のお言葉痛み入ります、ありがとうございます!これからこつこつと更新できればと思います……! (2022年6月5日 11時) (レス) @page45 id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
ラヴ(プロフ) - お帰りなさい!クラムチャウダー改めラヴでございます。停まっていて、とても心配しておりました…お戻りになられてとても嬉しいです!ご無理のないようお気をつけ下さい。応援しております( ¨̮ ) (2022年6月5日 0時) (レス) id: 906f0fe218 (このIDを非表示/違反報告)
もちりの(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品見る専だった時から大好きで…無理はしないでくださいね!更新頑張ってください! (2022年6月4日 6時) (レス) id: 8fca6226df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしわ | 作成日時:2021年8月23日 7時