5話[菅原side] ページ6
少しばかり落ち着きを取り戻した現場。
回復の早かった俺と大地は、影山に詳しく話を聞いてみることにした。
「なぁ、影山ー。
元カノの姿を見て動揺したってことは、もしかしてまだ未練あったりすんの?」
俺の発した言葉に、影山は軽く眉間にしわを寄せながら「いえ。烏野に入学してると思わなくて、そのことに動揺したんだと思います。」と言ってきた。
俺もそこまで恋愛経験豊富じゃないし、本当に勘でしかないんだけど。バレーに関しては天才で、失敗のほとんどない影山。そんな奴がミスしてしまうほど影響されてるのに、その子に全く未練がないとは考えにくい。
影山は未練のない元カノが同じ学校にいたとして、その場で驚くことはあれど、バレーにまで引きずるような奴ではないと俺は思っている。
その考えは大地も同じみたいで、頭を抱えている。
これは、自覚させないといけないやつだ。
周りから見れば何も違いなんてないように思えても、影山は確実にプレーに私情が入ってしまっている。本人は無自覚だったけど。
今は、日向との速攻が頼りである。コンビの相手である日向がやりづらさを感じてしまっていては、上手くいくものも上手くいかなくなる。
兎にも角にも、元カノのことを一度どうにかしなければならない。
「あのさ。影山の元カノって、どんな子なの?」
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「えっ!?あ、いやー…あの……単純に興味があって!影山が好きになった女の子ってどんな性格の子だったのかなーってさ。」
お節介なのは自分でも分かっているけれど、少しでも早く元の影山に戻ってほしくてつい口を出してしまう。影山は、しばらく考えて口を開いた。
「あいつは、とにかく優しくて明るくて。
見た目も綺麗…だと思います。俺にはもったいないくらいの奴で、どんな時でも味方でいてくれました。そんなあいつを傷つけてしまったことは、正直今でも後悔してます。」
そう話す影山の表情は、驚く程に優しくて切なくて……愛おしそうだった。
これで未練がないなんて、絶対嘘だ。
「もしさ。その子にいま新しく彼氏がいて、幸せにやってるとしたら素直に祝福できる?」
これは賭けだ。自分の本心に気づけるかどうか。
影山は、目を閉じて考えたのちにゆっくりと瞼を持ち上げて俺の目を真っ直ぐ見つめて答えた。
「祝福……できません。」
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作者名:灰次 | 作成日時:2019年6月28日 10時