28話 ページ29
あまりにウジウジ考え始める飛雄くんにイラついたのは事実だった。でも言って正解だった。
「……Aが好きでたまらねぇ。」
泣きそうな顔になりながらそう言ってくる飛雄くんを視界に捉えて、思わず顔が綻んだ。兄もだいぶ不器用だけど、彼も負けず劣らず不器用だ。
嬉しい気持ちのまま彼にがばっと飛びついた。
「おわっ!?」
さすがは運動部、油断していたからかよろめきはしたものの難なく受け止めてくれた。しばらく飛雄くんの温もりを堪能したあと、体を離して彼を見上げた。
「飛雄くん。
私、何があっても貴方の味方でいるよ。
私にはしてあげられること少ないけど、飛雄くんが私を求めてくれた時は全力で甘えられる場所になる。
私ももっともっと強くなる。」
そう伝えたら、今度は飛雄くんが私に抱きついてきた。大きくよろめいてしまったけれど、飛雄くんが支えてくれてもいたおかげで転ばずにすんだ。
彼は私の肩に頭を乗せながら呟いた。
「結局はお前に甘えてるよな、俺。」
「でも私、嬉しいんだよ?飛雄くんがこうやって甘えられる相手であり続けられること。」
「こんなに情けないのにいいのか。」
「好きな人の弱いところ見られるって幸せじゃないかな?私は泣いてる飛雄くんも、好きですよ。」
ぎゅーっと腕に力を強めた飛雄くんは、息を吐き出したあとで「俺、Aだから好きになったんだろうな。」と弱々しく言葉を紡いだ。
顔が見たくなって、「顔上げて。」とそのまま彼に伝えて指示に従ってもらった。
「目赤くなってるよ。」
「彼女が男前すぎるせいだ。」
「ふふっ、それは悪うございました!」
いつまでも暗い雰囲気のままでいるのは好きじゃないし、ふざけられるようになったことはいいことだ。
少し笑いあっていたら、突然「ぐわあぁあああ!!!」と飛雄くんが叫び出したと思ったら蹲ったので驚くことしか出来なかった。
「なに?どうしたの!?」
「……なんでもねぇ。」
「え!?いや、絶対なんかあるよね?」
「なんでもねぇって!」
そう言いながら、「ほら、教室まで送る。」と手を差し出してきたので素直に甘える。手を繋ぎながら空き教室の扉前まで歩くと、くるっと飛雄くんが振り向いた。そして、屈んだなと思った瞬間には唇を塞がれていた。
至近距離で「可愛い。」と呟いて、少し微笑んだと思ったら私の手を引いて空き教室を出た。
なんでそんな特大の爆弾落としていくんですか、飛雄くん。
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作者名:灰次 | 作成日時:2019年6月28日 10時