26話 ページ27
兄が何故かケーキを買ってきた。
「何となく食べたくなって買ってきた。」と言っていたけど、箱の中は私好みの種類で溢れていた。
体重のことなんか気にしないで一気に2個を平らげた。美味しいものを食べて少し元気が出てきた自分は、やっぱり食いしん坊だなと感じる。
それから数日、お風呂から上がって部屋へと戻ると、充電中のケータイが光っていることに気付いた。
誰だろう?なんて呑気なことを考えながら通知画面を目に入れた瞬間、私は文字通り固まってしまった。
影山飛雄会いたい。明日、昼一緒に食おう。
もうしばらく連絡は来ないものだろうと思っていただけにとても驚いたけど、心は正直なもので嬉しさでいっぱいだった。慌てて了承の返事をして、幸せと不安と色々な感情を持ったままケータイを抱きしめた。
翌日。
お昼休みになるまで落ち着かなかった。
いや、実際にこの時間になったらなったで何を言われるんだろうととても怖い。
一緒に食べる時はいつも屋上と決めているので、先に屋上へと赴き飛雄くんを待っていた。
ガチャ、ギーッと少し重たい錆びた扉を開く音。
視線を向けると、コンビニ袋を片手に持った飛雄くんが固い表情で立っていた。
ひらひらと飛雄くんに向けて手を振ると、ちょっとだけ表情を和らげて返事をするように片手を上げた。
「食べる場所、ここで良かった?」
「あぁ。
食べ終わったら空き教室に行ってもいいか?」
「大丈夫だよ。」
「おう。」
気まずくなるのは分かっていたけど、ご飯の時くらいは明るい気持ちで食べたくて話題を何個か振った。
飛雄くんも同じ気持ちだったらしく、いつもは相槌を打つだけのことが多いけど今日は沢山喋ってくれていた。お互いに食べ終わり、飛雄くんに誘導されるまま空き教室へと向かった。
「この間は本当に悪かった。ごめん。」
頭をきちんと下げて謝る姿に、こういう真面目なところも好きだなと的外れなことを思っていた。謝罪から始まったことに、別れ話じゃないみたいだと少し安堵した。
「あの言い方はさすがに傷つきました。」
「本当にごめん。
でも、バレー部でのことは自分で解決したかったし、Aに余計な心配かけたくないって思って。」
「だったらそこもちゃんと言ってよ。」
「……俺、言わなかったか?」
「言ってません。」
「…まじか。」
しばらく無言が続いた。
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作者名:灰次 | 作成日時:2019年6月28日 10時