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25話[影山・及川side] ページ26

心の中を読まれた気がした。
ハッとする俺のことを置いておいて、及川さんは言葉を続けた。



「お前は考えたの?
チビちゃんが欲しいトスに100%応えているか。
応える努力をしたのか。
現状がベストだと思い込んで守りに入るとは、随分ビビりだね?」



日向が欲しいトス。応える努力。
そう言われると一瞬にして分からなくなった。
でも、あいつが求めるトスなんて。
そんなこと言えるほどまだ技術なんてないだろ。
だから、目を瞑った日向の手元にドンピシャで球を持っていってるんだし。



「勘違いするな。
攻撃の主導権を握ってるのは、お前じゃなくてチビちゃんだ。それを理解できないなら、お前は独裁の王様に逆戻りだね。」



主導権を握ってるのは日向。
及川さんが伝えたいことは何となく分かってる。
分かってるんだけど。


それだけ言って、及川さんはこの場を離れていった……と思ったらスッと立ち止まって振り向いた。



「言い忘れてた。
俺の大事な妹を泣かせた罪は重いからね?
俺としてはお前たちが別れてくれた方が嬉しいけど、そんなことになりたくなければ1回話すだけでもしといた方がいいんでない?じゃあ。」



怖いくらいの微笑みだった。
もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
でも逃げちゃいけない。
Aとは、一度話し合おう。





――――――――――――――



本当に、不器用な奴。

バレーに関しては天才で、その上努力も怠らない。
Aに関しては、あいつから溢れんばかりの愛情を貰ってる。でも両方とも、活かしきれてない。
勿体ないよ、飛雄ちゃん。


Aを泣かせたこと、無駄にしないでよね。
あいつには笑顔が似合うんだから。
まぁそんなの、お前が一番知ってるのかもしれないけどさ。あーあ!腹立つよねー、本当に。


「徹、なに百面相してんだ?」

「なんでもないよ〜。早く帰ろ!」



可愛い妹と生意気な後輩が付き合ってると最初に知った時は、ただただ苛立ちしかなかった。
でも日に日に可愛さが増していくAを見て、「あぁ、いい恋愛できてるんだな」と納得したのを覚えてる。飛雄ちゃんと別れた去年は、泣いて泣いてどうしようもなかった。だけど、どういうわけかまた付き合い始めて、Aの顔に可愛い笑顔が戻った。



なんか悔しいから、明日思いっきり岩ちゃんのことからかってやろーっと!
そしてAには……


「猛!ケーキでも買って帰るか!」



俺も大概、妹バカだ。

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作者名:灰次 | 作成日時:2019年6月28日 10時

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