遠回りな恋と温かな愛【影山飛雄】 (ページ22)

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21話ページ22

飛雄くんの様子がおかしい。
昨日遠征から帰ってきて何かあったとしか思えない。とにかくピリピリしてる。

谷地さんが新しくマネージャーに入って、選手同士の信頼もより厚いものになっていると飛雄くん自身が嬉しそうに言ってたのはつい最近のこと。
彼の機嫌を左右するのはいつだってバレーボールだ。だからきっと部活で何かがあったはず。

そうなってくると、私には口出ししていいことなのか悩ましいところである。

お昼休み、それとなく様子を見ようとご飯に誘ってみた。一緒に食べてくれるみたいで、とりあえずは安心。場所はお馴染み、屋上です。

「今日も晴れて良かったね！」

「あぁ。」

「………(うーん、どうしたものか。)」

パンをもぐもぐ食べながら、眉間にはシワが寄っている。機嫌が悪いわけではないけど、良いわけでもない。そんな感じだ。
話だけでも聞いてみるのは大丈夫かなと思いながら、私は口を開いた。

「……バレー部で何かあった？」

そう尋ねると、飛雄くんの体がピクっと動いた。
視線を右へ左へ動かしながら、どう答えようか悩んでるみたいだ。バレーについての悩み事を、飛雄くんが私に言ってきたことはない。だから今回も言うつもりはないんだろうと思ったけど、悩んでると分かっている恋人を放っておくことは出来なかった。
それが誤りだったと気付くのは、このあとすぐのことだった。

「良かったら話だけでも聞くよ？言ってスッキリすることもあると思うし。」

話しやすいように、落ち着いたトーンで柔らかく声を発したつもりだった。だけど、返ってきた言葉はとても冷たく鋭いものだった。

「……Aに話して何かが変わると思えない。
これは俺の問題だ。Aには何も関係ない。」

ドキッとした。
そしてとても痛かった。
私は選択を間違えた。
バレーのことに関しては、やっぱり素人の私が口出すことじゃなかった。分かってたはずなのに、飛雄くんの優しさや温かさを貰いすぎて、今回もそんな風に不器用な笑顔で話してくれると勘違いしてた。
だけど、あまりに鋭い言葉に私の心は勝手に傷付いて、脳が涙腺を緩める指示を出した。

「ごめん、余計なこと言った。」

「……なんでAが泣くんだ？
泣くような場面だったか？今。」

情けない。何かあったらすぐに泣く。
そんな弱くなりたくないのに。
何を勝手に涙の指示なんか出してるんだ、私の脳。

止まって、今すぐ止まれ。
私の涙。