20話 ページ21
西谷さん・田中さんとの別れ際に、「「最後に是非とも我らに微笑みをぉおおお！！」」と謎の言葉をかけられたけど、「気にしなくていいぞ！」という菅原さんの言葉に助けられ、手を振ってお別れした。笑顔で手を振っただけなのに、胸を抑えてうずくまった二人がどうなったのかは私には分からない。
2人で歩く夜道。
住宅街なので街灯もあまりないけど、飛雄くんがいるから怖くない。そっと手を繋いでみた。
ビクッと手が揺れたけど、ぎゅっと握り返してくれる大きい手が愛しい。
「飛雄くん。」
「ん？」
名前を呼んで、私は立ち止まった。
動かなくなった私に驚いて、２歩進んでた飛雄くんは振り返る。キョトンとした顔の彼に向かって、そのまま勢い良く抱きついた。
「はっ！？えっ！？」
珍しくテンパってる飛雄くん。
その様子が面白くて、クスクス笑っていたら頭の上に顎を乗せられた。
「なに笑ってんだ。」
「ごめんごめん、怒らないで。」
「怒ってはないけど。突然なんだ？」
「んー？飛雄くんから抱きしめられたら私は元気出るから、飛雄くんもそうかなって思って抱き着いてみた。あ！でも私が抱きしめないとダメか！」
抱きしめられに行ってしまった！失敗した！と焦ってたら、繋いでた手を外されて両腕でぎゅっと強く抱きしめられた。飛雄くんの顔は私の頭頂部にキスするような形で乗っている。
「ありがとう。元気出た。」
「そっか！私も元気出ちゃった！」
「なぁA。」
「なに？」
「……キスしてもいいか？」
「え？」
ビックリした。
何がビックリって、実は私と飛雄くんはまだキスしたことがなかったからだ。頬にとか、瞼にとかならある。でも口にされたことは今までなかった。こういうことにあまり興味がないと思っていただけに、本当に驚いてる。
「あ、あの！キスって…一体どこに…」
「口に決まってるだろ。」
「う、はい。」
こっちがパニックに陥ってると、そっと腕が緩められて飛雄くんの手が私の頬に触れた。
赤くなってると自覚があるほど熱くなった顔を彼に向けて「お願いします。」と返した。
すると、頬にあったはずの彼の左手は私の右耳に触れるように移動して耳をさわさわと撫でられた。
それに思わずビクついてしまうと、今度は手が首の後ろをガシッと掴んでそのまま引き寄せられた。
初めて触れた彼の唇は柔らかくてとても熱くて、少しがさついていた。
「好きだ。」
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作者名：灰次 | 作成日時：2019年6月28日 10時
