遠回りな恋と温かな愛【影山飛雄】 (ページ3)

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２話ページ3

飛雄くんに別れを告げられた後はとにかく泣いた。
体の約60％は水分で出来ているというけれど、全て出切ったのではないかというほどに泣いた。

バレーに集中したいと言われたら、私にはどう頑張っても何も言い返すことができない。
私とバレーとでは、比較対象にすらならない。

バレー馬鹿な人を兄に持っているから、嫌でも分かってしまう。どれだけ努力してるか、どれだけ本気で向き合っているか。
だから別れを告げられたとき、ただ頷くことしかできなかった。重い女になりたくなかった。本当の意味で嫌われたくなかった。

中学最後の県大会。
こっそり観に行った。
誰にも気づかれないように、いつもと違う系統の服を着て帽子を被って。

目の前に広がる光景に驚くと同時に、その場にいる飛雄くんの表情を見て胸が苦しくなった。
出来ることなら今すぐ近くに行きたい。
抱きしめたい。頭を撫でたい。
貴方の代わりに泣きたい。

でももうそんなことは許されない。

ただ願うことは、どうかこの先の道で、飛雄くんの笑顔がまた見られればいいなと言うこと。
その笑顔を隣で見たい……なんて、そんな贅沢なことは言わないけれど。

―――――――――――――――

中学一年・二年と同じクラスになった。
正直、一目惚れだったと思う。
とても綺麗な顔をしてると思った。

たまたま日直でペアを組むことになった日。
話しかけてみると、見た目のクールさとは違って優しく言葉を返してくれたし、日直も真面目に取り組んでくれた。バレーをしてると教えてもらったのもこの時だ。

「及川さんって、バレー部にお兄さんいる？」

「あ、うん。及川徹は兄なの。」

「やっぱり。目が似てるなってちょっと思った。」

「似てるかな？自分じゃ分からないや。」

「性格は全然違うけどな。」

「ふはっ。確かにそうかも。」

飛雄くんと話すのはとても楽しくて、一年の間にお互いはっきりと友達と呼べるくらい仲良くなれた。
二年に上がってしばらくした頃、私は思い切って告白することにした。勝算があるわけじゃなかった。
簡単に言えば自分の気持ちを抑えきれなくなった。

「飛雄くんのことが好きです。
付き合ってください。」

そう声に出したら、飛雄くんはとても驚いたように目を見開いて固まった。数秒経ったあと顔を真っ赤にして「俺も好きだ。」と応えてくれた。
その日は一緒に帰ったけれど、お互い緊張しすぎて一言も喋れなかったのは良い思い出。