17話 ページ18
とうとうインターハイ予選が始まった。
自分が出場するわけじゃないのに、とてつもない緊張感が自分を襲う。
一日目の初戦、常波との戦いには勝利。
2戦目は伊達工。
鉄壁と言われるブロックに悩まされたけれど、西谷さんや菅原さんの言葉・東峰さんのトラウマの克服により勝利した。
兄のいる青城も、初日は難なく勝利。
家に帰ってから飛雄くんに「初日お疲れ様でした」とメールを打って、自分の部屋へと向かうために階段を上っていたとき、下りようとしていた兄の姿が目に入った。
「あれ？お兄ちゃん、寝るんじゃなかったの？」
「うん、まぁそうなんだけどね。
明日の試合のこと考えるとゾクゾクしちゃって眠れそうにないから、ちょっと気分転換にホットミルクでも飲もうかと思ってさ。」
「あ。じゃあ私作るよ！私も飲みたいし！」
「ありがとね。」
キッチンへと向かって、それぞれのマグカップに牛乳を注いでレンジへ。
兄が片足を上げて座っているソファーに行き、「はい。」とマグカップを手渡す。
兄の横に座り、猫舌な為に少し冷やそうと息を吹きかけていた時に隣から声が聞こえた。
「明日。うちが勝つよ。」
「………」
「ま。深く考えずに、その時応援したいように応援すれば？必ずどっちかの味方でなきゃいけないなんてことはないんだからさ。」
「うん。
飛雄くんは……ううん、烏野は強いよ。」
「うちも強いよ。
だからこそ、全力で潰しに行く。」
ギラギラと楽しそうに見える兄の瞳を見て、少しだけ恐怖を覚えた。中学時代、兄が荒れていた時期があった。部活の後輩が怖いんだと言っていたけど、いま思えばそれは飛雄くんのことだったのだと思う。一さんが止めてくれなければ、もしかしたら兄はバレーを続けられなかったかもしれない。
明日、どちらが勝つのかは分からない。
お互いのチームが全力で戦うんだ。
少し難しい顔をしていたのか、ふっと兄が笑った。
私の頭に手を乗せてゆるゆると撫でたあと立ち上がった。
「応援する方だって体力使うんだから、早く寝なよ。あと、どっちが勝ってもお前は飛雄の前で笑ってればいいよ。それがお前に出来ることだよ。
ま！明日はうちが勝つから！泣いてる飛雄ちゃんを慰めてあげなよー！」
ふふふと高らかに笑った兄に飲み終わっていたマグカップを取られた。シンクへ運んでくれるらしい。
その後「おやすみ！」と言い、歯磨きをしに洗面台へと消えた兄。
「笑ってればいい……か。」
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作者名：灰次 | 作成日時：2019年6月28日 10時
