16話 ページ17
GW中は毎日必ず電話をくれて、マメだなーと感心してしまう。前以上に大事にされてると実感する。
ユニフォームも配布されたらしく、写真も送られてきた。わがままを言っていいなら、着用してる写真が欲しかった。けど、試合を観に行ったら好きなだけ見られるかと思い直し、飛雄くんの背番号のユニフォーム写真を待ち受けに設定した。
リビングのソファーでケータイを触りながらまったりしていると、後ろの背もたれ部分に違和感を感じて振り返った。兄がいた。背もたれの上に肘をついて、そのまま頬杖している。腰を曲げるのはきつかったのか、足は膝立ちだ。
「なに？」
「べっつにー。
ユニフォームが待ち受けとか、本人の写真を待ち受けにするよりなんか愛あるなーって思っただけ。」
「……また彼女にフラれたの？」
「…………」
「お兄ちゃん？」
「……違うしっ！今回は俺が振ったんだもん！
バレー優先だからあまり構えないよって言ってあったのにしつこくデートに誘われるからちょっと重くなっちゃって。」
「はぁー。だから言ってるじゃない。
本当に好きになった人と付き合いなさいって。」
「俺はちゃんと好きだよ！
でも相手が思ってたのと違ったっていうか。」
兄の発言に頭を抱えたくなる。
女の子の気持ちを読み取るのが上手いくせに、なぜその子が彼女という立ち位置になった途端に分からなくなるのか。
「今度恋人を作る時は告白してきた人を彼女にするんじゃなくて、自分から好きになって告白した人を恋人にしてみたら？告白が成功するかはお兄ちゃんの頑張り次第だけど。」
「俺から告白ねぇ……うーん。」
「なに？なんか問題でも？」
「いやー…そう言われると、告白したくなるほど好きになった経験ってないなって思って。」
また、頭を抱えたくなった。
彼女ができた回数は多いくせに、本気で好きになったことないってどんな拗らせ方してるんだ。
「Aだって、飛雄ちゃんから告白されて付き合い始めたんでしょ？」
「残念！最初に告白したのは私からです！
好きだなって気持ちが抑えきれなくて告白したの！」
「ちょ！えっ！？嘘でしょ？？
Aからなの！？あのクソ生意気な天才野郎のどこがいいのさ！！」
「お兄ちゃんには分からないよ、飛雄くんの魅力は！」
文句を言う兄を残しその場を去る。
不器用な優しさ、大きい手の安心感、真っ直ぐな瞳、温かくて低い声、ぎこちない笑顔。
その全てが彼の魅力であり、彼の好きな所。
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作者名：灰次 | 作成日時：2019年6月28日 10時
